『Histoire of Eternto−イストワール オブ エテルノ−』

第1話 訪れし者

≪登場人物≫

サイアス♂(17歳):自由気ままな冒険者。
イヴァン♀(21歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団大隊長。
アーシア♀(17歳):法国ルミナシア皇女。信託を受けし聖女。(謎の少女)
ラキア♀(28歳):法国ルミナシアの大司教。
フォルテ♂(18歳):謎の少年。
シエル♂(24歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団騎士団長。
黒騎士(??歳):漆黒の甲冑を纏っている謎の人物。(被り役)
ヤシュム不問:黒い猫のような見た目だが、猫より大きい。一部の人意外には見えない仕様。
お兄さん♂(32歳):(被り役)
兵士♂(20代前半):(被り役)


【HPはこちら】
キャラクター詳細や世界観は此方で確認お願いします。


【役表】

サイアス:
ヤシュム:
イヴァン:
謎の少女:

フォルテ:
黒騎士:

お兄さん:
ラキア:
シエル:

兵士1
兵士2
兵士3



*0*−00−0*0−00−*0*−00−0*0−00−*0*−00−0*0−00−*0*−





(一人の少年と猫らしき生き物が森の中を駆けている。)


サイアス:「はぁはぁ・・・はぁはぁ。」

ヤシュム:『ほら、早く。』

サイアス:「あぁっ! っ・・・!」(一瞬立ち止まるがすぐ走り出す。)


謎の少女:「何処までも続く大地と海、この世界アルシャディアの果てを知る人はいない。
      なぜなら世界に蠢く魔物たちに比べ、人は余りにも小さく弱い。

      女神ヴァレスティアの恩恵の中で護られる事でしか生きるすべを知らない人々は
      長く続いた平和の中で、外の世界は危険だということが記憶から薄れつつあった。

      定められた生の中で繁栄と成長を続ける世界。
      霧のように微かに犇き始める闇に恐れもせず、
      全ての人々の為の平和と更なる発展を遂げていくであろう。」



(*大聖堂前広場*
 馬が嘶き、数名の兵士と一人の少女が何かを待っていると暫くして一人の男が現れる。)


謎の少女:「・・・。」

兵士2:「準備が整いました。」

兵士3:「ご苦労。(兵士2に) 
    
    (謎の少女の方を向いて頷く)」

謎の少女:「(相槌をつく)・・・参りましょう。」

兵士2:「畏まりました。」

謎の少女:「それでは行ってきます。」

兵士3:「道中お気をつけて。」

謎の少女:「はい。」

兵士3:「馬を出してくれ。」

兵士2:「はっ。  さぁ、出発だ! はいやっ!」(馬の尻を足で蹴って出発する)




≪大聖堂の屋根の上≫



フォルテ:「ふぅ〜ん、此処が聖都シュティレーゼか。
      やっぱ空気が違うね、ふふっ。」

黒騎士:『・・・』

フォルテ:「清々し過ぎて反吐がでそう。」(微笑)

黒騎士:『やるべき事はわかっているだろうな?』

フォルテ:「勿論だよ。」(嬉しそうに)

黒騎士:『遊びは程々に・・・。』

フォルテ:「とっとと行ったら?」

黒騎士:『・・・分かった、では後程。』(消える)

フォルテ:「またね。ふふっ・・・くくくっ。
      何だか楽しくなりそうな予感。」


謎の少女(M):「女神ヴァレスティアの慈愛に満ちたこの地より、
         アルシャディアが平和で穏やかでありますように。」


(森から抜けた瞬間鳥が羽ばたき、目の前に大空が広がる。)

サイアス:「はぁはぁ・・・ぷはっ!」

ヤシュム:『間に合った!』

(ドラゴンの鳴き声)

サイアス:「うひゃぁああ!」


(目の前を通り過ぎるドラゴンの姿に目をキラキラさせながら感動している。)


サイアス:「おーい!!」

ヤシュム:『返事するわけ・・・。』

(ドラゴンの鳴き声。)

サイアス:「ぉおお! やっぱ本物は迫力あるなぁ!!」

ヤシュム:『当然ダヨ。人間の数万倍もデカイんだカラ。』

(段々と見えなくなって行くドラゴンを見て。)

サイアス:「あ・・・行っちゃった。」





謎の少女:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)第1話 訪れし者』





≪ある日のとある戦場≫



ラキア:「っ、これは一体・・・。」

シエル:「ん、様子はどうだ?」

ラキア:「見ての通りです。」

シエル:「あぁ・・・、こりゃどう見ても”異常”だな。」

ラキア:「・・・救助要請が来てから私たちが此処に来るまでに
     それほど時間は経過していない筈。」

シエル:「報告じゃ、大型の魔物が2〜3匹って聞いたが・・・、
     この量、想定の範疇を超えてるな。」

ラキア:「この夥しい数の魔物、
     事態は私たちの想像している以上に深刻のようです。」

シエル:「原因は分かるか?」

ラキア:「今は憶測でしかお伝えする事が出来ません。」

シエル:「それでも良い。」

ラキア:「・・・。 女神の加護が弱まり
     守護獣の力が薄れてきているものかと。」

シエル:「詳しく調べてみる必要がありそうだな。」

ラキア:「・・・。(頷く)」

シエル:「時は、一刻を争う・・・か。」

ラキア:「はい。」



≪馬車で移動中≫



お兄さん:「そういや坊主。」

サイアス:「ん?」

お兄さん:「さっきドラゴンは見れたのかい。」

サイアス:「あぁ、バッチリ! 突然止めてくれなんて言ってごめん。」

お兄さん:「ははっ。気にするなって。
      なんせあの貴重なドラゴンを拝めたってんだからラッキーじゃないか。」

サイアス:「そうだな、今日の俺は運が良いなぁ♪」

ヤシュム:『調子乗ってると痛い目見るヨ。』

サイアス:「わ、分かってるって。」(こそっとお兄さんに聞こえないように)

お兄さん:「おっ! 見えてきたぞ。
      あそこに見えるのが聖都シュティレーゼだ。」

サイアス:「おおぉ! デッカイっ。」

お兄さん:「ははっ、そりゃそうだろ。
      法国の心臓部ともいえる場所だからな。」

サイアス:「すっげぇ!」

お兄さん:「此処へ来るのは初めてか?」

サイアス:「うん!」

お兄さん:「お前さん冒険者なんだろ、他にはどんな所行ったんだ?
      何か、面白い冒険談とかあったら聞かせてくれよ。」

サイアス:「あぁ、ごめん。まだ何処にも行ってないんだ。
      シュティレーゼが一番最初の目的地。」

お兄さん:「へぇ。・・・んじゃ、どっから出て来たんだ?」

サイアス:「ナーシェン地方にあるトリス村だけど。」

お兄さん:「うへっ!? な、ナーシェン地方から?」

ヤシュム:『当然の反応ダヨネ。』

お兄さん:「そりゃまた随分遠くから来たな。」

サイアス:「ははっ、まぁね。」

お兄さん:「俺は仕事柄アルシャディア中馬車で駆け回ってるが・・・
      まだ、聞いたこと無い名前の村だ。」

ヤシュム:『ど田舎通り過ぎてるんだヨ。』

サイアス:「(苦笑)本当、辺境の地って感じ。」

お兄さん:「なるほどねぇ。静かで良さそうな所じゃないか。ははっ」

サイアス:「うん、確かに!」

お兄さん:「遠くからの長旅だ。
      結構疲れてるんじゃないか?」

サイアス:「そうでもないよ。此処まで来るのはめっちゃ楽しかったし!
      知らない景色見たり、知らない人と話すのも、
      どれも新鮮であっという間だった。」

ヤシュム:『ボクは疲れたけどね。』

お兄さん:「へへっ、まったく初々しいもんだ!
      久し振りに坊主見たいな奴にあったよ。」

サイアス:「あ、そっか・・・。
      今時自分から危険を冒してまで
      旅をしようって人は中々居ないか。」

お兄さん:「あぁ、結界の外に出ない限りは
      安全を約束されてるようなもんだからな。
      俺みたいに外を渡り歩いてる商人は例外ってだけでさ。」

サイアス:「旅商人も大変だね。」 

お兄さん:「俺は好きでこの商売を選んでやってるから楽しいけどな。
      まぁ、あれだ。アルシャディアは広い。
      社会勉強の一環として回る価値はあると思うぜ?」

サイアス:「そうだな!」

お兄さん:「あ、坊主。」

サイアス:「ん?」

お兄さん:「聖都は初めてだったよな。」

サイアス:「お、おう。」

お兄さん:「いいか、向こうに着いたら
      あんまりキョロキョロするんじゃねーぞ?」

サイアス:「え、なんで?」

お兄さん:「最近聖都近辺の街が立て続けに壊滅状態になってる話だ。
      そのせいもあって聖騎士団の目が厳しくなってるんだってよ。」

サイアス:「何で壊滅状態になったんだ? 街は結界に守られてる筈だろ。」

お兄さん:「なんでも、それが壊されて魔物に巣食われちまったってさ。」

ヤシュム:『結界カが壊されタ?』

サイアス:「ん〜・・・。結界ってそう簡単には壊せないって聞いたけどな。」

ヤシュム:『その筈だヨ。』

サイアス:「どういう事だ?」

ヤシュム:『さぁ。』

お兄さん:「さてな。俺にも詳しいことは分からん。」

サイアス:「そっか・・・。」

お兄さん:「まぁ、だから面倒ごとには巻き込まれないように注意しろよ?
      不審者と間違われたら大変な事になるぞ。」

サイアス:「うん、分かった。気を付ける。」

お兄さん:「おっと。そうこう話してる間に着いちまったぜ。」

サイアス:「もう? 何かあっという間だったな。」

お兄さん:「さぁ、俺が送ってやれるのは此処までだ。」

サイアス:「よ・・・っと。(馬車から降りる)
      兄さん、世話になったよ。」

お兄さん:「いいって事よ。あぁ、忘れてた。」

サイアス:「ん、何?」

お兄さん:「ほらっ!」(袋を投げる)

サイアス:「っと・・・」(受け取る)

お兄さん:「餞別だ。」

ヤシュム:『何貰ったんダ?』

サイアス:「え、良いのか?」

お兄さん:「ははっ、勿論だ。ペットにも分けてやれよ!」

(サイアスとヤシュムは互いに顔を見合わせる。)

サイアス:「あ・・・。」

ヤシュム:『ぁ・・・。』

サイアス:「うん、お前が見えてたみたいだな。」

ヤシュム:『そう見たイ。』

お兄さん:「じゃあな! 坊主に女神の加護をっ。」(遠ざかっていく)

サイアス:「あぁ、ありがとう!(去ってく相手に手を振って見送る)」

ヤシュム:『面白い人だったネ。』

サイアス:「ふぅ・・・(小さな吐息をしてから大きな門を見上げる)
     
      へぇ、此処が聖都シュティレーゼ。」




≪民家の屋根の上≫




フォルテ:「なるほど、この結界を護ってるのは女神の・・・」

サイアス(声):「よいしょっと。 おっ!? ひゃぁ〜、すっげ〜っ!」

フォルテ:「ん? この気配は・・・」(ボソッ)

サイアス(声):「本当にでっかいなっ! へぇ〜(見渡して)
        何処見渡しても建物と人ばっかだな。
        此処なら目的地も見つけやすいだろ! え〜っと、聖騎士団屯所は・・・」

フォルテ:「聖騎士団屯所なら」

サイアス:「うわっ!?」

フォルテ:「東(シャルク)方面にある平屋がそうだよ。」
 
サイアス:「ビックリした・・・。」

フォルテ:「ふふっ、驚いた?」

サイアス:「あ、あぁ。まさか屋根の上に人がいるとは思ってなかったから。」

フォルテ:「ボクも人が登ってくるとは思わなかったよ。でもさ。」

サイアス:「ん?」

フォルテ:「屋根の上って見晴らしがいいよね。」

ヤシュム:『・・・。』(無言で見つからないようにその場を去る)

サイアス:「そうだな。 そっちは何の目的で登って来たんだ?」

フォルテ:「フォルテ。」

サイアス:「え。」

フォルテ:「ボクの名前。キミは?」

サイアス:「あぁ、俺の名前はサイアス。」

フォルテ:「サイアス、あのさ。」

サイアス:「何だ?」

フォルテ:「登ってきたついでにボクの暇潰しに付き合ってよ。」

サイアス:「暇潰しって・・・。なぁ、ヤシュム何とかしt・・・っていない!?
      アイツ何処いったんだよ!!」

フォルテ:「さっきからずーっと待ちぼうけしてるんだ。
      だから、構わないよね?」

サイアス:「へっ!?。」

フォルテ:「お互い得物持ってるんだし、答えは一つしかないよ。ふふっ」

サイアス:「はぁ!? いきなり何言い出すんだ?!」

フォルテ:「丁度足場も悪いし、少しでも足を踏み外したら軽傷じゃ済まない。
      この緊張感溜まらないよね。」(微笑)

サイアス:「ちょ、ちょっと待てって!」

フォルテ:「ふふっ、ゾクゾクしてきた。」

サイアス:「おい、人の話聞けよ!」

フォルテ:「もう、遅い、よっ!」

サイアス:「ぃいっ!? いきなりかよ!」

フォルテ:「はっ!」

サイアス:「うわっ!」

フォルテ:「楽しもうよ、ねぇっ!」

サイアス:「ったぁ!? くそっ、来て早々変なのに絡まれちまったな。」

フォルテ:「ほら、得物抜かないの? 首、落ちるよ。クスッ。」

サイアス:「うわぁ・・・、これって、気ィ抜いたら殺されちゃうパターン?」

フォルテ:「遊ぶなら、それくらい楽しまないと。」

サイアス:「くっ、仕方ない・・・。」

フォルテ:「遅いよ、ほらっ!」

サイアス:「うおぉ!?」

フォルテ:「せいっ!」

サイアス:「づっぁ!? 武器くらい抜かせろって・・・」

フォルテ:「(食い気味)抜かせない、ふっ!」

サイアス:「っと!・・・うぐぐっ。」

フォルテ:「さっきから避(よ)けてばかりだね。」

サイアス:「んな事言ったって。避(よ)けなきゃ死ぬだろ!?」

フォルテ:「分かってないなぁ。
      それじゃ全然面白く無いじゃないか。はっ!」

サイアス:「どわっ!?? あっぶねぇ〜!!」

フォルテ:「ほーら、もう追い詰めた。」

サイアス:「しまったっ。」

フォルテ:「どうする?」

サイアス:「どうする・・・って?」(恐る恐る)

フォルテ:「もっと楽しめるかと思ったけど此処までだね。残念だよ。」

サイアス:「ちょ、ちょっと・・・」

フォルテ:「ま、暇つぶしにはなったし、
      ボクに殺されるか此処から落ちて死ぬか。
      どっちか選ばせてあげるよ。」(刃先を向ける)

サイアス:「言ってることが滅茶苦茶だろ! 少しは人の話を聞けって。」

【梯子から人の影】

イヴァン:「っしょっと・・・。」(梯子を登って来る)

サイアス:「ん?」

フォルテ:「新しいお客さんみたいだね。」

イヴァン:「ったく、誰だよ。こんな面倒くせー所に登った馬鹿は。
      ・・・っと(ぶつぶつ言いながら登って来る)
      ふぅ、登って来るのも一苦労だな。」

サイアス:「あの甲冑って聖騎士団の? 
      もしかして、俺助かったのか・・・!?
      ちょ、ちょっとお姉さん助けて・・・」

イヴァン:「(被せる)あぁ!! や〜っと見つけた!!」

サイアス:「へっ!?」

イヴァン:「お前等が犯人だなっ!」

フォルテ:「ふふっ、面白い人が来た。」(ボソッ)

サイアス:「え、犯人って? ちょ、ちょっと待てって! 
      この状態見て第一声がそれかよっ! 
      目の前で殺人が起きようとしてんだぞ!」

イヴァン:「んな事知るかっ!!!」

サイアス:「ぇええ!?」

イヴァン:「お前等の所為で下が大騒ぎなんだよ! 見てみろっ。」

サイアス:「下っ・・・(目線だけ下に送る)
      うわっ、本当だっ・・・。」

イヴァン:「状況が理解出来たんなら、遊んでねぇでとっとと降りろ。」

サイアス:「あの、降りたいのは山々なんだけどさっ!」

イヴァン:「あん?」

サイアス:「この状況どうにかして欲しいかな、なんて・・・。」

イヴァン:「自分でなんとかしろ!」

サイアス:「ちょっ!? 聖騎士団の仕事は民間人を守ることだろっ!?」

イヴァン:「そもそも、お前得物持ってるんだから自分で戦えるだろ。」

サイアス:「ひぇええ!? それが出来ないから助けを求めてるんですけど!?」

フォルテ:「お姉さん、強そうだね。」

イヴァン:「ん?」

フォルテ:「はっぁ!」

イヴァン:「おっとっ。 っ!」(受け止める)

フォルテ:「やっぱり受け止めてくれたね。」

イヴァン:「行き成り刃むけてくるたぁ言い度胸だ、なっ!」

フォルテ:「ふっ(ジャンプで後退して避ける)っと・・・。
      同じ双剣使いなんだね、ボクたち気が合うんじゃないかな?」

イヴァン:「は? 何言ってんだ。」

フォルテ:「ふふっ、思ったこと言っただけだよ?」

イヴァン:「そんな事より、お前何者だ。どっから来た。」

フォルテ:「さぁ、ただの通りすがり、かな。」

イヴァン:「けっ。ただの通りすがりが、
      大層な武器振り回して優雅にお散歩ってか?
      笑えない冗談だな。」

フォルテ:「そう? 新しい遊び相手が見つかってボクは楽しいけど。」

サイアスM:「気がそれた今のうちに。」(槍を抜く)

イヴァン:「こんの、ガキ。本気でやるってんなら相手になるぞ。」

フォルテ:「本当!?」

サイアス:「てやぁあっ!!」

フォルテ:「っ、(受け止め鍔迫り合いが始まる)
      なんだ。やれば出来るじゃん。」

サイアス:「武器さえ持たせて貰えればこっちのもんだ。」

フォルテ:「ふぅ〜ん・・・。」

サイアス:「な、なんだよ。」

フォルテ:「さっきの気配はこれだったんだね。」

サイアス:「何が!?」

フォルテ:「ううん、こっちの話。連れて来て貰えたならそれでいいよ。」

サイアス:「?」

イヴァン:「さっきから分けの分かんねぇ事をごちゃごちゃと!」

フォルテ:「はっ!」(押し返す)

サイアス:「うわっ。」

フォルテ:「もう少し遊んで貰いたかったけど、タイムオーバーみたい。」

イヴァン:「なに?」

フォルテ:「よっ・・・・と」(隣の家の屋根に飛び移る)

サイアス:「なっ 隣の屋根に飛び移った!?」

フォルテ:「また、次会うときに相手してもらうよ。」

イヴァン:「っ!? 待てっ」

フォルテ:「じゃあね・・・っふ。」(屋根から飛び降りる)

サイアス:「なっ、飛び降りたっ!!」

イヴァン:「チッ、消えたか。」

サイアス:「お、追わなくて良いのか?」

イヴァン:「・・・おい、お前。」

サイアス:「え、でも追わ・・・」

イヴァン:「(食い気味)いいから、そこに倣え。」

サイアス:「は?」

イヴァン:「あん、聞こえなかったのか?」

サイアス:「は、はいっ! 聞こえてましたっ。」(姿勢を正す)

イヴァン:「それで、一体何が目的だ?」

サイアス:「へ、目的って言うと?」

イヴァン:「この騒ぎを起こした原因を聞いてんだ、よっ!」(胸倉掴む)

サイアス:「ぅおっ。し、知らないって! 
      気付いてたら巻き込まれてたんだって。」

イヴァン:「嘘は、言ってねぇーだろうな?」

サイアス:「も、勿論っ!
      さっき俺が殺されそうになってたの見てた、だろ!?」

イヴァン:「ふぅん(まだ疑ってる目)・・・まぁいいや。
      事情聴取すっから取り敢えず屯所まで来て貰おうか。
      詳しい話はそこで・・・」


【遠くの方で大きな爆発音】


サイアス:「うわっ!?!?」

イヴァン:「っんな。」

サイアス:「爆発っ!?」

イヴァン:「なんだよ、ったく!!(胸倉放す)」

サイアス:「ゲホゲホっ。」

イヴァン:「次から次へと、今日は厄日かっ。」

サイアス:「けほっ、早く向かったほうが・・・。」

イヴァン:「元からそのつもりだってーの!」

サイアス:「じゃ、俺はこの辺で・・・。」

イヴァン:「ははぁ〜ん、どさくさに紛れて逃げようって魂胆か。」

サイアス:「ぎくっ。」

イヴァン:「誤魔化せると思ってんのか、ん?」

サイアス:「ははは・・・。」

イヴァン:「うふふ、お前も来いよ♪」(超笑顔)

サイアス:「はっ!?」

イヴァン:「どっちにしろ屯所の方角、だっ。」(首に手を回される)

サイアス:「うぇえ!? ちょ、ちょっと?」

イヴァン:「口開けてっと舌噛む、ぞっ!」(っと同時に跳躍する)

サイアス:「ちょ、うわぁあああああ(段々遠くなる)」




≪シュティレーゼ入り口≫



兵士2:「こちらです。」

シエル:「ふむ・・・。(少し目を通して)
     それじゃ、これで頼む。」

兵士2:「畏まりました。」(走り去っていく)

シエル:「こんなもんでOKだな。 大体片付いたか・・・。
     ラキア、そっちはどうだ?」

ラキア:「・・・っ。」(違和感を感じている。)

シエル:「ん、どうした?」

ラキア:「何か感じませんか?」

シエル:「・・・(気配を少し辿る)
     嫌な雰囲気だな。」

ラキア:「胸騒ぎがします。私は聖堂の方へ・・・」


【爆発音】


ラキア:「!!」

シエル:「っ!?」

兵士2:「だ、団長!! 結界が、結界が崩れます!?」(動揺している)

シエル:「一体どういうことだ?」(冷静)

ラキア:「結界が破壊された・・・?」

シエル:「ラキア、そっちは頼んで良いか。俺は法王の所へ向かう。」

ラキア:「分かりました。」

シエル:「第一騎士団!」

兵士1:「はい!」

兵士2:「はっ!」

シエル:「結界崩壊地域に向かい民間人の避難を最優先。
     残りは各所門番に伝え、全ての門を一時閉鎖し検問を設けろ。」

兵士1:「畏まりました!」(走っていく。)

兵士2:「了解です!」(走り去っていく。)





≪詰所近く≫





イヴァン:「・・・っと、こらしょっと」(着地してサイアスを解き放つ)

サイアス:「ぐえぇ、ゴホゴホ、ゲホッ」

イヴァン:「(手を叩きながら)
      いやぁ、しっかしすげー有り様だな、結界に穴開いてらぁ」

サイアス:「ゲホッ、ゴホッ。け、結界に穴って・・・やばいんじゃ?」

イヴァン:「確かにやばいな。おい、誰もいねぇのか!?」

兵士2:「ら、ラングフォード隊長!」

サイアス:「隊長?」

兵士1:「いつ帰られたんですか!? 大変なことに。」

イヴァン:「見りゃわかるってーの。状況を説明しろ。」

兵士2:「はっ! 何者かによる内部からの攻撃により、結界が一部破損しました。
     取急ぎ結界の修復に取り掛かっておりますが、何匹か魔物の進入を許した模様。
     只今、その捜索及び排除に当っております!」

イヴァン:「犯人の目星は?」

兵士1:「いえ、未だ発見に至っておりません。」

イヴァン:「ったく、馬鹿なことやってくれたなぁ。」(呆れ)

サイアス:「もしかして・・・。」

イヴァン:「分かった、お前達は引き続き捜索を進めてくれ。」

兵士1・2:「了解いたしましたっ!」(去っていく)

イヴァン:「よし。っつー事だ、お前も・・・って何処行こうとしてんだ。」

サイアス:「え、さっきの奴を探しに行こうかと。」

イヴァン:「探したって見つかりゃしねーよ。」

サイアス:「何で分かるんだ?」

イヴァン:「あ? 気配だ。もう消えてる。」

サイアス:「へぇ〜・・・」

イヴァン:「んな事よりお前、戦闘経験は?」

サイアス:「まぁ、人並みになら。」

イヴァン:「十分。見ての通り人手不足なんだ、手貸してくれよ。」

サイアス:「構わないけど。」

イヴァン:「うし。これが片付いたら騒ぎの件は見逃してやるからな。」

サイアス:「本当!? よかったぁ。」

イヴァン:「そういや、お前名前は?」

サイアス:「俺はサイアス、サイアス=ロクスウェル。」

イヴァン:「ロクスウェル? ふっ、なら心配はいらなそうだ。」

サイアス:「へ?」

イヴァン:「いんや。お、・・・早速出てきやがったな。」(構える)

サイアス:「よぉし、任せろ!」(構える)

イヴァン:「(数多くの魔物を見て)
      おいおい、何匹どころじゃねぇな。報告はちゃんとしろっての。」

サイアス:「全部倒せば問題ない!」

イヴァン:「はは、そーだな。」

サイアス:「この数の魔物だったらなんとかなるさ。」

イヴァン:「よし、行くぞ!」 

サイアス:「あぁ!」

イヴァン:「はっ、てやぁ!」

サイアス:「せいっ!」

イヴァン:「とりゃっ、結界の修復が終わるまで持ちこたえろ、よっ!」

サイアス:「ふっ! 分かってる。」

イヴァン:「はっ!」

サイアス:「てやっ!」

イヴァン:「ん、いい太刀筋だ。 でやっ!」

サイアス:「サンキュー! はぁ!」

イヴァン:「・・・それより。」

サイアス:「ふぅ(一息付く)ん、それより?」

イヴァン:「さっきから減ってる気がしねぇな、はっ!」

サイアス:「確かに・・・。」

イヴァン:「ふっ、てやっ! どうなってんだ?」

ラキア:「その場から動かないで下さい。」

イヴァン:「お、帰ってきたみたいだな。」

サイアス:「え?」

ラキア:『サンチダージュインジール』

イヴァン:「助っ人のお出ましだ。」

サイアス:「な、なんだ!? 足元が光ってるぞっ。」

ラキア:『慈悲深き華よ、神秘の護りをもって無法なる者達へ静かなる破滅を
     光芒なる滅殺の方陣リュミエールクライス』

サイアス:「うわっ、眩しっ!!」

ラキア:「これで殲滅完了です。」

イヴァン:「りょーかい。」

サイアス:「す、すごい。一瞬で魔物が消えた・・・。」

ラキア:「結界の方も修繕はほぼ終わっているので、先程の集団が最後です。
     これ以上魔物が増える事は無いでしょう。」

イヴァン:「流石、仕事が早いなぁ♪」

ラキア:「当たり前です。仕事を的確にこなしたまで。」

イヴァン:「で、ですよねー。」

ラキア:「・・・・。」

サイアス:「ん?」

イヴァン:「そ、それより予定より早い帰りだったな。」

ラキア:「はい、取急ぎ報告する事がありましたので。」

イヴァン:「んじゃ、団長は?」

ラキア:「法王の下に行かれています。」

イヴァン:「そっか。」

ラキア:「ラングフォード隊長。」

イヴァン:「ん?」

ラキア:「聞きたいことが山程あるのですが。」

イヴァン:「えぇっと?」(ドキッ)

サイアス:「俺、邪魔みたいだな(ボソリ)」

ラキア:「貴方が居たにも関わらず、この有り様・・・。」

イヴァン:「いや、ほら! 今日は私だけだったから手が回らなくって。」

ラキア:「もちろん、この非常時ですから
     他の部隊が出払っていたのは承知の上です。」

イヴァン:「それじゃぁ・・・。」

ラキア:「それとこれでは話は別です。
     どうしてこの事態に至ったのか、経緯を話して頂きましょう。」

イヴァン:「あぁ、その件に関してはあいつが・・・。」

サイアス:「へ?」

イヴァン:「おい、ちょっとこっち来いっ」(引っ張る)

サイアス:「うわっ、な、なんだよ!?」

ラキア:「・・・?」

イヴァン:「こいつが、原因なんだよ。」

ラキア:「誰ですか?」

サイアス:「へっ!? さっき言ってた事とちg」

イヴァン:「(遮る)ってことで。私はこれから後始末をしてくる!
      報告はその後でいいだろ?」

ラキア:「ラングフォード隊長・・・。」

イヴァン:「変わりにこいつ置いてくから、好きに使ってくれよ。」(慌てる)

サイアス:「ちょっ。」

イヴァン:「じゃぁな!」(走ってその場を離れる)

サイアス:「えぇぇえええ!?」

ラキア:「あぁ・・・。」

サイアス:「う、嘘だろ・・・。」

ラキア:「はぁ・・・(深い溜息)」

サイアス:「・・・うっ!?」(ビクッ)

ラキア:「それで?」

サイアス:「は、はい。」

ラキア:「貴方の名は?」

サイアス:「サイアス=ロクスウェル・・・です。」

ラキア:「では、ロクスウェル。詳しい事情を話して頂きましょうか。」



サイアスM:「そして、俺の災難は続くのであった・・・。」




シエル:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』 第2話 巡り合いし歯車」










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