『Histoire of Eternto−イストワール オブ エテルノ−』

第5話 陰謀

≪登場人物≫

ユアン♂(22歳):ギルド蒼穹の燕、団員。
スレイヴ♂(41歳):ギルド蒼穹の燕、団長。
カルテリア♀(18歳):ギルド蒼穹の燕、団員。
トゥライト♂(24歳):ギルド蒼穹の燕、団員。
マクタバ♂(43歳):首都フラーテル、星の騎兵軍、将軍。
ナグラーダ♀(35歳):共和国ランガルド、首都フラーテルの宰相。
オルフィス♂(25歳):“白馬の紋章”を背負いし者。
謎の男♂(28歳):各国を渡り歩いている傭兵。

【HPはこちら】
キャラクター詳細や世界観は此方で確認お願いします。


【役表】(3:2:0)

ユアン:
スレイヴ:
マクタバ:
ナグラーダ:
カルテリア:
トゥライト:
謎の男:
オルフィス:
兵士1:



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≪回想しながら走っている。≫




スレイヴ:『ユアン、ちょっと待て。』

ユアン:『?』

スレイヴ:『お前には別の用件を頼む。』

ユアン:『別の?』

スレイヴ:『あぁ、お前は直接ナグラーダ嬢の所に向かってくれ。』

ユアン:『分った。』

スレイヴ:『いざこざが起きる前に、総督権限で指示を仰いで貰う。
      それと、兵士の様子も見てきてくれ。』

ユアン(M):「問題なく辿り着けたのはいいけど・・・、
        宮殿前も周辺も余り兵士を見かけないな。」

ユアン:「っ? 今のは・・・? (何かに気付く)
     追いかけてみよう。」





トゥライト:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
       第5話 陰謀」





≪共和国中心部≫



ナグラーダ:「今の爆発は一体なんです。 状況を報告しなさい。」

兵士:「は。何者かによって一部結界が破壊され、そこから多数の魔物が入り込んでいます。」

ナグラーダ:「兵の動きは。」

兵士:「街の混乱により情報の伝達が遅れ、
    未だ、まともに身動きが取れない状況であります。」

ナグラーダ:「何をやっている! 民の命を守る事が最優先でしょう。
       早急に足場を固め陣形を整え、民の救助及び魔物の排除を行ないなさい。」

兵士:「御意っ。」(去る)

マクタバ:「フロイデ宰相、拙者も戦地へ出向きましょう。」

ナグラーダ:「いえ、マクタバ将軍は彼女の元へ向かって欲しい。」

マクタバ:「彼女、というと・・・。ふむ、成る程 承った。
      早急に様子を見て参りましょう。」

ナグラーダ:「お願いします。」

マクタバ:「それでは、失礼する。」(去る)

ナグラーダ:「・・・。(少し間を置いて)
       どうやらネズミの侵入を許してしまったようね。」

オルフィス:「なるほど、気配の察知能力は悪くはない。」

ナグラーダ:「この騒ぎの犯人は貴方達かしら。」

オルフィス:「ふふっ、勘も良いみたいだ。」

ナグラーダ:「・・・・・・・・。」

オルフィス:「怒らせてしまったかな、宰相殿は真面目だね。」

ナグラーダ:「分かっているのなら、無駄話はやめて対話をしなさい。」

オルフィス:「いやだ、と言ったら?」

ナグラーダ:「・・・・。」

オルフィス:「ははっ、冗談だよ。」

ナグラーダ:「目的はなに。」

オルフィス:「何だと思う?」

ナグラーダ:「質問に質問で返すのは無礼よ。」

オルフィス:「ふふ、ははははっ。」

ナグラーダ:「何故笑っているの。」

オルフィス:「くく、来たよ。」

ナグラーダ:「ん?」


(走ってくる)


ユアン:「フロイデ宰相っ!」

ナグラーダ:「貴殿は・・・。」

ユアン:「(近くまで寄る)お怪我はありませんか?」

ナグラーダ:「え、えぇ。私は無事よ。」

オルフィス:「ユアン、久し振りだね。」

ユアン:「・・・っ! オルフィス。どうして・・・。」

ナグラーダ:「知り合いなの?」

ユアン:「・・・・。」

オルフィス:「宰相殿、腐れ縁って奴だよ。」

ナグラーダ:「なに?」

オルフィス:「それより、
       俺はキミに会いに来たんだよ。」

ユアン:「冗談言える人だったかな。」

オルフィス:「久し振りの再開なのに随分と冷たいじゃないか。」

ユアン:「・・・っ。」(警戒)

オルフィス:「ねぇ、久し振りに手合わせしないかい?
       キミの腕が鈍ってないか確認して上げるよ。」(構える)

ユアン:「フロイデ宰相、下がっていてください。」

ナグラーダ:「分かったわ。」

オルフィス:「ふっ、はぁあ!」(上段蹴り)

ユアン:「ぐっ。」(腕でガード)

オルフィス:「成る程。じゃ、これは? はぁっ!」(回し蹴り)

ユアン:「っ! (一度避ける)」

オルフィス:「(食い気味)まだ終わってないよ、せいっ!」(拳の突き)

ユアン:「がはっ、げほごほっ・・・。」

オルフィス:「防御のみでの応戦、しかもそれですら完全でない。
       相変わらず平和主義を気取ってるんだね。」

ユアン:「くっ。」

オルフィス:「・・・(つまらなそうな顔)
       随分と弱くなったよ。とても残念だ。」

ユアン:「・・・・。」

オルフィス:「けど、折角の再会なんだ、記念に一つだけ良い事を教えてあげる。」

ユアン:「・・・っ!」

オルフィス:「これからね、面白い事が起きるんだ。」

ユアン:「面白い事? 何を、企んで。」

オルフィス:「俺は何も企んでないよ。強いて言うならば、
       変化なるモノの行く末を楽しんでいる達観者、とでも言っておこうか。」

ナグラーダ:「変化なるモノ?」

ユアン:「何が起きてるんだ・・・。」

オルフィス:「俺に、その質問に答える義務は無い。」

ユアン:「なら、喋ってもらうまで。」

オルフィス:「キミにそれが出来るのかい。」

ユアン:「正直、貴方に傷を負わせられる事が出来るかも定かではないよ。
     だけど、やって見る価値はあると思う。」

オルフィス:「ふふっ、目付きが変わったね。以前と比べたらか弱いけど。」

ユアン:「・・・。」

ナグラーダ:「大丈夫なの?」

ユアン:「自信はないですけど、やってみます。」

オルフィス:「いつでも良いよ。」

ユアン:「はぁああ、てやっ!」(拳の突き)

オルフィス:「真っ直ぐ、そして単純だ、ふっ(腕で流す)」

ユアン:「流されたっ。」

オルフィス:「ほら、隙だらけ。」

ユアン:「く。」

オルフィス:「遅いっ(そのまま腕を掴む)」

ユアン:「しまっ。」

オルフィス:「(食い気味)これで正面がお留守だ、せいっ!」(空いた片方の腕で拳の突き)

ユアン:「ふっ(避ける)」

オルフィス:「っ!」

ユアン:「はぁぁあ!!」(避けた勢いで回し蹴り)

オルフィス:「っと(後方に飛ぶ)
       避けた反動を加速に使って、そのまま足技に切り替えたのか。
       咄嗟の判断にしてはまぁまぁだよ。
       けど、つまらない。これじゃただの・・・、ん?」

ナグラーダ:「え、今の一瞬で・・・反撃を・・・?」

オルフィス:「・・・・(頬に付いた傷を撫でながら)
       へぇ〜、成る程。手加減してたとは言え。
       俺に傷をつけられるくらいには落ちぶれてないって事か。」

ユアン:「喋る気になった?」

オルフィス:「俺が人に指図されるの一番嫌いって知ってるよね?」

ユアン:「っ!」

オルフィス:「気が変わった。ふっ。」

(一瞬でユアンの目の前に移動する。)

ユアン:「消えたっ!?」

オルフィス:「鈍い。」(胸倉を掴む)

ユアン:「うぐっ。」

オルフィス:「もう一つだけっ。」(そのまま地面に叩きつける)

ユアン:「がはっ。」

オルフィス:「良いこと教えてあげようか。」(そのまま相手を見下ろす)

ユアン:「は、離、せっ。」

オルフィス:「ふふ。俺にとってキミを殺す事は造作もないんだよ。」(顔を近づけて微笑む。)

ユアン:「くっ・・・。」

オルフィス:「こうやって、ねっ!」(顔の直ぐ横の床に拳を落とす)

ユアン:「っ!!」

オルフィス:「ふふっ・・・怖いかい? でも此れが現実だ。
      
       キミは生かされている、
       それを肝に銘じておいた方がいい。」

ユアン:「どういう・・・。」

オルフィス:「あの満月の日は最高に甘美だったよ。 とても酔狂な夜だった。」(微笑)

ナグラーダ(M):「視線がこちらに向いた?」

ユアン:「っ! や、やめるんだっ。」

オルフィス:「本当は止められてるけど、キミ以外なら殺しても構わないよね。
       また絶望を味合わせてあげる。 あの日の再現だっ。」(胸倉を離す)

ユアン:「げほっげほっ。 そんな事は、させ、ないっ。」

オルフィス:「今のキミに、言葉通りの力は・・・」(走り出す)

ユアン:「だ、ダメだ!」


(上空から現れる)


オルフィス:「存在しないっ。」

謎の男:「っ。」(着地)

オルフィス:「はっぁ!」(蹴り技を入れる)

謎の男:「ふっ。」(刀で防ぐ)

オルフィス:「っ!? っと。(後方へ飛ぶ)
       へぇ、この攻撃を防ぐ人がいるんだ。」

ナグラーダ(M):「あれは、誰だ・・・?」

ユアン:「フロイデ宰相、お怪我は。」

ナグラーダ:「平気よ、それよりあなたの方が心配だわ。」

ユアン:「僕は、大丈夫・・・です。」

謎の男:「・・・・っ。」(刀を構え睨み付ける)

オルフィス:「その刀先を俺に向けてどうするの?」(相手を睨み付ける)

謎の男:「・・・。」

オルフィス:「何処の誰だか知らないけど、正当な勝負に横槍入れてくるなんて
       随分マナーがなってないんじゃない?」

謎の男:「・・・・。」(刀を向けたまま)

オルフィス:「ふふっ、黙ってやり過ごそうと思ってる?」

謎の男:「刻まれたくなければ、この地から立ち去れ。」

オルフィス:「やっと喋ったと思ったらそれかい? 俺がその言葉に従う理由は?」

謎の男:「二度は言わない。」

オルフィス:「・・・その態度気に入らない、俺の大嫌いなタイプだよ、キミ。」(構える)

謎の男:「受けて立つ。」(構える)


【爆発】


ナグラーダ:「な、爆発!?」

オルフィス:「チッ、これからだって時にタイミング悪いね。」

ユアン:「っ・・・二発目? 何の意図が。」

オルフィス:「意図? そんなもの考えても無駄だよ。」

ユアン:「え?」

ナグラーダ:「も、もう一度問う。目的は何?」

オルフィス:「宰相殿、それは俺が答えるべき質問じゃない。
       貴方が直接、導き出すものだ。」

ナグラーダ:「どういう・・・。」

オルフィス:「それじゃ、俺は用件を済ましたから退散するよ。
       ・・・ユアン。」

ユアン:「・・・っ」

オルフィス:「また会う機会は何れ来る。その時も今の状態のままだったら
       次こそは、殺してしまうから。ふふっ。
       精々足掻いて見せてよ。それじゃ、さよなら。」(飛び降りる)

ナグラーダ:「ま、待てっ!」

謎の男:「追うのは私が。事態の収束を。」

ナグラーダ:「貴方は、何者・・・。」

謎の男:「後は頼んだ。」

ナグラーダ:「この高さから飛び降りたらっ!」

謎の男:「・・・っ。」(飛び降りる)

ユアン:「っ・・・(見下げる)
     きえ・・・た?」

ナグラーダ:「どうなっているの・・・。」

マクタバ:「フロイデ宰相! ご無事か!」

ナグラーダ:「マクタバ将軍、無事で何よりです。
       様子はどうでした?」

マクタバ:「先の攻撃で酷く傷ついていた様子。 
      しかし、今の二発目後は把握出来ておりません。」

ナグラーダ:「分かりました。」

ユアン:「街の様子も気になりますね。」

マクタバ:「貴殿は?」

ユアン:「申し遅れました。僕は蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)所属
     ユアン=イグニスと申します。
     団長スレイヴ=グローリアの命令により、直接指示を仰ぎに参りました。
     先ほど、二度目の襲撃があり、事態はより悪い方へと向かっています。
     今は早急な判断と指示が必要な時です。」

ナグラーダ:「スレイヴ殿の・・・わかったわ。
       それで、ギルドの動きは?」

ユアン:「一度目の爆発直後から、民間人の保護を最優先に行動を開始。
     魔物の侵入している可能性も考え、
     爆発地域及びその周辺の捜索に向かっております。
     仲間の情報では、他のギルドも同等な行動を取っているようです。」

ナグラーダ:「・・・(深く深呼吸)
       分かった、ならばユアン殿に伝令を任せても良いかしら。」

ユアン:「はい。」

ナグラーダ:「ギルド協会所属、
       西(デュシス)の蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)
       及び、北(シャマール)の氷山の熊(イスベルグ アルクトス)は
       一度目の爆発地域をそのまま継続して担当。
       二度目の爆発地域には東(シャルク)の荒野の猟犬(デシエルト ケイヴツァイド)
       及び、南(ノトス)の大洋の鯱(オセアーノ エポラール)を直ちに調査に向かわせなさい。」

ユアン:「フロイデ宰相はどうなさるんですか?」

マクタバ:「フロイデ宰相は拙者にお任せを。」

ユアン:「分かりました。僕はこれから伝令に向かいます。」

ナグラーダ:「ユアン殿。」

ユアン:「はい。」

ナグラーダ:「助けられたわね、感謝するわ。」

ユアン:「いえ、それでは失礼します。」(去る)

ナグラーダ:「・・・・。」



≪一度目爆発現場≫



トゥライト:「おりゃぁあ!(薙ぎ払い)っと・・・。
       ふぃ、リーダーこっちはOKだ。」

スレイヴ:「よし、粗方片付いたな。」

カルテリア:「おいしょっと、こっちも完了だよ!」

スレイヴ:「了解だ、後は結界の修復が終わるまで保てば良し。」

カルテリア:「ねぇねぇ、団長。」

スレイヴ:「ん、どうした。」

カルテリア:「さっきからユアンの姿が見えないけど、どしたの?」

トゥライト:「そういやぁ、見ねぇな。」

スレイヴ:「あいつには、別の用件を頼んだ。」

カルテリア:「別の?」

スレイヴ:「あぁ。順調に事が進んでりゃ、そろそろ来る頃だ。」

ユアン:「お待たせ。」(上空から)

トゥライト:「おっ、噂をすりゃって奴か。」


(屋根から飛び降りてくる)


ユアン:「っと。」(着地)

カルテリア:「ユアンおかえり〜。」

ユアン:「ただいま、待たせちゃってごめんね。」

カルテリア:「ううん、全然楽勝だったから良いんだけどさ。」

ユアン:「なら、よかった。」

カルテリア:「あれ。ユアン、怪我してるけど大丈夫?」

トゥライト:「怪我? 珍しい事もあんだな。」

ユアン:「そう、かな。大した事無いから平気だよ。」

スレイヴ:「それより、どうだった? 指示は仰げたか。」

ユアン:「うん、僕たちと、熊(アルクトス)は現状維持。
     猟犬(ケィヴツァイド)と、鯱(エポラール)は
     二度目の爆発地域の調査を優先。」

スレイヴ:「わかった。カルテリア、今の話聞いてたな?」

カルテリア:「おっけー!」

スレイヴ:「ギルド協会総督、ナグラーダ嬢の命令だ。
      急ぎで各ギルドの大将に伝令を頼む。」

カルテリア:「りょーかい! 行って来ま〜す。 よっと!」(屋根の上に飛び上がって去る)

スレイヴ:「これで、戦力の分担に文句は出ねぇだろ。」

トゥライト:「どういうこった?」

スレイヴ:「仮に、俺が東(シャルク)の大将に
      現場の指示をした所で聞く耳持つ分け無いだろ?
      だったら最初から総督権限を持って話を進めた方が、簡単に用は済むってこった。」

トゥライト:「はぁ〜ん」

スレイヴ:「ユアン、宮殿内と近辺の様子はどうだった?」

ユアン:「僕がフロイデ宰相の所に着いた時は、殆どの兵士は出払っていたよ。」

スレイヴ:「マクタバ将軍は。」

ユアン:「敵と入れ違いで戻ってきた。 外に出てたみたい。」

スレイヴ:「なるほど。状況は把握した。」

トゥライト:「そんで? 俺らは現状維持で良いんだっけか。」

スレイヴ:「あぁ、任せたぞオールラウンダー。」

トゥライト:「おう、俺がいれば百人力だぜ! 後は任せろっ!」

スレイヴ:「ははっ、頼もしい奴だ。」

ユアン:「うん。」

スレイヴ:「ところで、ユアン。」

ユアン:「なに?」

スレイヴ:「後で詳しい話を聞かせろよ。」

ユアン:「え。」

スレイヴ:「あの単純な命令で、お前が怪我して帰ってくるとなりゃ、
      只事じゃないくらい分かる。」

ユアン:「・・・っ。」

スレイヴ:「いいな?」

ユアン:「わかった。」




≪襲撃後半日が経過≫




カルテリア:「はぁ、疲れた〜!」

トゥライト:「流石に腹減ったな。」

ユアン:「アレから半日も動き回ってるんだし、しょうがないよ。
     そろそろ休憩にする?」

スレイヴ:「お〜、お疲れさん。」

ユアン:「あ、スレイヴ。 鯱(エポラール)の人から伝言を預かってるんだけど・・・。」

スレイヴ:「なんだって?」

ユアン:「三方向とも、落ち着きは取り戻したって。
     結界も魔物の侵入は防げる程度には修復できたらしい。」

スレイヴ:「了解。 んじゃ、俺たちも一旦引くか。」

カルテリア:「はぁい。」

トゥライト:「しっかし、凄い有様だよな。 片付くのか。」

ユアン:「みんなで頑張れば直ぐだよ。」

スレイヴ:「お前、体力仕事は得意じゃなかったか?」

トゥライト:「何言ってんだよ。俺にも限界があるっつう〜の。」

カルテリア:「私には絶対無理。 体力ないし。」

トゥライト:「何言ってんだ。 か弱い振りすんなよ。」

カルテリア:「なにうぉお!? 筋肉馬鹿に言われたくないです〜!
       ユアンも何か言ってやってよ!」

ユアン:「えぇっ!?」

トゥライト:「はっ!? なんでユアンに振るんだ、お前は!」

スレイヴ:「ほれ、お前らとっとと帰って体休めて来い。
      明日から過酷な肉体労働が待ってるんだからな。」

カルテリア:「あっと、団長の拳が来る前に帰ろぉと。 じゃあね、お疲れ様!」

トゥライト:「んじゃ・・・俺も。 おつかれ〜っす。」

ユアン:「ははっ、まさに鶴の一声って奴だね。」

スレイヴ:「ったく、あいつらは。 少しは仲良くできねぇのか。」

ユアン:「喧嘩するほど仲が良いって言うでしょ?」

スレイヴ:「ふっ。そうだな。
      ・・・・ユアン、少し散歩するか。」

ユアン:「あ、うん。 分った。」



(暫く街の中を歩く。)



スレイヴ:「・・・それで、宮殿で何があったんだ?」

ユアン:「この襲撃事件の犯人と思わしき人物と接触をした。」

スレイヴ:「そいつと一戦交えたって事か。」

ユアン:「そう。」

スレイヴ:「特徴は?」

ユアン:「“白馬の紋章”を身に纏ってた。」

スレイヴ:「“白馬の紋章”だって・・・?」(足を止めてユアンの方に振り返る)

ユアン:「うん、間違いないよ。」

スレイヴ:「今度はそっちか。なんだか面倒くせぇ事になってきたな。」

ユアン:「そっち、って?」

スレイヴ:「いやな、先日シュティレーゼも
     “獅子の紋章”を纏った奴に襲撃受けてんだよ。」

ユアン:「え?」

スレイヴ:「明日先方から書状が届くらしい、事実確認はそっからだ。」

ユアン:「何かが動き出してるって事?」

スレイヴ:「どうだろうな。 大荒れになるのは間違いないだろ。」

ユアン:「・・・。」

スレイヴ:「それで?」(また歩き出す)

ユアン:「あ、えっと。
     宮殿前に着いた時にその人物を見かけたんだけど、
     もしかしてと思って追いかけてみたら
     フロイデ宰相の所に辿り着いたんだ。」

スレイヴ:「そん時の兵士の動きは。」

ユアン:「言われた通り、周辺も確認してみたけど全く見当たらなかった。」

スレイヴ:「どういうことだ。」

ユアン:「分からない。 ・・・・・・それと。」(足を止める)

スレイヴ:「ん?」

ユアン:「その人物は・・・僕の知ってる人だった。」

スレイヴ:「・・・名は?」

ユアン:「・・・オルフィス。」

スレイヴ:「・・・。」

ユアン:「・・・彼の目的は一体何だろう。」

スレイヴ:「・・・怖いか?」

ユアン:「・・・(首を横に振る)
     怖いと言うよりは・・・悔しい気持ちの方が強いかな。
     前も、今回も僕は何も出来なかった。」

スレイヴ:「(暫く間を置いて)・・・勇気だ。」

ユアン:「え?」

スレイヴ:「お前は極端に人を傷つける事を恐れてる。
      勿論、話し合いで解決できりゃ、それに越したことは無い。
      だがな、世の中そう上手く行かない事の方が多い。
      特に男はな、餓鬼だから譲れないもんが多すぎて面倒くせぇんだ。」

ユアン:「スレイヴも?」

スレイヴ:「そうだ。
      何も人を傷付ける勇気を持てって言ってんじゃない。 
      何かを得るために何かを捨てる勇気を持てって事だ。」

ユアン:「・・・うん。」

スレイヴ:「じゃなきゃ、そんなぼこぼこにされて帰ってくるわけ無いだろ。
           お前の腕は俺が一番よく知ってんだ。」

ユアン:「・・・何でもお見通しだね。」

スレイヴ:「ふっ、何言ってんだ。
      兎に角、悔しいんなら自分自身を見つめなおす事だな。
      それがお前の課題だ。」

ユアン:「分った。  ぁ、・・・ねぇ。」

スレイヴ:「どうした。」

ユアン:「・・・“生かされてる”ってどういう事?」

スレイヴ:「誰に言われたんだ。」

ユアン:「彼に・・・。」

スレイヴ:「そうだな。 その辺に関しては俺にもわからない事が多い。
      こっちで少し調べてみるから、お前は心配しなくていいぞ。」

ユアン:「うん。」

スレイヴ:「よし、ユアン。 お前も帰って休め。 今日は疲れたろ。」

ユアン:「え、でも。」

スレイヴ:「俺の事は気にするな。 それと、ちゃんと治療受けてから帰れよ。」

ユアン:「わかった。じゃあ、また明日。 スレイヴお疲れ様。」

スレイヴ:「あぁ、お疲れさん。」



(ユアンを見送ると視線をそのまま変えず)



スレイヴ:「そういや、ユアンを助けてくれたってな。」

謎の男:「目的の為だ。」

スレイヴ:「目的、ねぇ。
      お前なら知ってるんじゃないか?」

謎の男:「?」

スレイヴ:「アルシャディアで何が起こっているか。」

謎の男:「・・・未だ定かではない。」

スレイヴ:「はぁ、お手上げ状態って事か。」

謎の男:「貴方なら・・・何を得て何を捨てる。」

スレイヴ:「さっきの話か? 俺の答えは秘密って事にしといてくれ。」

謎の男:「・・・。」

スレイヴ:「そういうお前さんはどうなんだ。」

謎の男:「・・・全てだ。」




(場面変わる)





マクタバ:「建国以来、経験したことの無い大惨事とは言え。
      我々が此処まで動けぬとは。」

ナグラーダ:「我が国の在り方を、今一度考え直すべき時が来たようね。」

マクタバ:「仰る通りかと。」





スレイヴ:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』第6話 模索」










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