『Histoire of Eternto−イストワール オブ エテルノ−』

第6話 模索

≪登場人物≫

ユアン♂(22歳):ギルド蒼穹の燕、団員。
スレイヴ♂(41歳):ギルド蒼穹の燕、団長。
ナグラーダ♀(35歳):共和国ランガルド、首都フラーテルの宰相。
マクタバ♂(43歳):首都フラーテル、星の騎兵軍、将軍。
リヴィエール♂(35歳):ギルド荒野の猟犬、団長。
ミュゲ♀(31歳):ギルド大洋の鯱、団長。
ヌーヴェン♂(29歳):ギルド氷山の熊、団長。
ハザル♂(28歳):各国を渡り歩いている傭兵。
ピルカ不問(??):妖精。大人しくてかわいらしい性格。

【HPはこちら】
キャラクター詳細や世界観は此方で確認お願いします。


【役表】

ユアン:
スレイヴ:
リヴィエール:
/ハザル:
ヌーヴェン:
マクタバ:
ナグラーダ:
ミュゲ:
ピルカ:



*0*−00−0*0−00−*0*−00−0*0−00−*0*−00−0*0−00−*0*−





≪共和国ランガルト・首都フラーテル≫




ピルカ(M):『二日前、フラーテルが襲撃されるという大事件が起きた。
       当時は予想だにしていなかった出来事に、全ての対応が遅れ
       二発目の攻撃までも許してしまう事態に陥った。
       しかし、フラーテルが誇る四大ギルドの早急な判断と行動力により
       事態は収束へと向かう。
       そして現在は街中も落ち着きを取り戻していた。』





(ノック音)

スレイヴ:「開いてるぜ。」

マクタバ(声):「失礼致す。」

スレイヴ:「お? 珍しい客だな。」

ユアン:「マクタバ将軍。」

マクタバ:「突然の訪問、申し訳ない。」

スレイヴ:「いや、それは良いんだが。将軍、いきなりどうした。」

マクタバ:「・・・ギルド協会総督、ナグラーダ=フロイデ殿から伝令を承った故、
      こちらに伺わせて頂いた。」

スレイヴ:「やっと来たか、今かと待ってたぜ。」

マクタバ:「西(デュシス)の蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)団長スレイヴ=グローリア殿。」

スレイヴ:「ん。」

マクタバ:「及び、団員ユアン=イグニス殿。両名、至急宮殿にお越し頂きたい。」

ユアン:「僕も、ですか。」

スレイヴ:「ま、そうなるだろうな。お前は唯一敵と接触した人間だ。
      重要参考人として招きたいって所だろ。」

マクタバ:「お察しの通り。」

スレイヴ:「了解、準備出来次第向かう。」

マクタバ:「御待ちしております。」

スレイヴ:「将軍直々ご苦労さん。」

マクタバ:「否、拙者の個人的願望も入ってるが故、足を運ばせて頂いたまで。
      貴殿とは、一度直接お会いしたかった。」

スレイヴ:「なんだなんだ。俺はお会いしたい何て言われるたまじゃねぇぞ。」

マクタバ:「ふっ、ご謙遜を。」

ユアン:「あ、あの。」

マクタバ:「おっと、話しが逸れてしまったな。拙者はこれで失礼する。
      しからば、後ほど。」

スレイヴ:「あぁ、また後で。」

ユアン:「ご苦労様です。」

マクタバ:「では」(去る)

ユアン:「スレイヴ、何か隠してること在りそうだね。」

スレイヴ:「そ、そうか? 特に後ろめたい事した覚えはねぇんだが。」

ユアン:「追求したりしないから安心してよ。」

スレイヴ:「ん、いつからお前の方が優勢になったんだ? この会話。」

ユアン:「さぁ。」

スレイヴ:「それよりも、だ。これから議会に行く前に、言っておく事がある。」

ユアン:「・・・うん。」

スレイヴ:「察しはついてるだろうが、質問された事に対しては包み隠さず話すことだ。
      嘘や隠し事は、お前にとっても、この国にとっても良い事にはならない。」

ユアン:「・・・うん。」

スレイヴ:「ま、ナグラーダ嬢の命を助けたって話だ。
      その考慮もいれりゃ、そこまでお前が難しく考える必要はねぇだろうがな。」

ユアン:「実際、助けたのは僕じゃないんだけどね。」

スレイヴ:「謎の男、か。謎は深まるばかりって奴だな。
      んじゃ、気持ちを切り替えて行くとすっか。」

ユアン:「わかった。」





ミュゲ:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』 第6話 模索」





≪宮殿ギルド会議室≫



リヴィエール:「よう、スレイヴ。久し振りじゃねぇか、とっくにおっ死んだと思ってたぜ。」

スレイヴ:「おう、東(シャルク)の大将も元気そうでなによりだ。お陰さまでピンピンしてるぞ。」

リヴィエール:「チッ、つまらねぇ野郎だな。少しは乗って来たらどうだ?」

スレイヴ:「まてまて、今はそういう場じゃねぇだろ。」

リヴィエール:「何ならこの場で始めても良いんだぜ。
        テメェーとは一回殺り合いたかったからな。」

スレイヴ:「相変わらずお熱いこって。
      その内、脳味噌まで筋肉になっちまうんじゃねぇか?」

リヴィエール:「あん?」

ユアン:「す、スレイヴ。発破かけてどうするの。」

スレイヴ:「ん? くくっ。」

ユアン(M):「あぁ、面白がってる。」

リヴィエール:「もう一度言ってみろ、この老いぼれ。」

スレイヴ:「耳まで遠くなったか? 若いのに苦労してんな。くくっ。」

リヴィエール:「クソ、その口黙らしてやろう、っか。」(拳を繰り出す)

ヌーヴェン:「止めないか。」(拳を抑える)

リヴィエール:「っ! ヌーヴェン、テメェ。」

ヌーヴェン:「猟犬(ケイヴツァイド)、挑発に乗るな。」

リヴィエール:「チッ、離せよ。っ。」(相手の手を振り切る)

ヌーヴェン:「スレイヴさん、結果が分かっている挑発は。
       余り快いものではありませんよ。」

スレイヴ:「はは、悪い悪い。」

ミュゲ:「もう、辞めてしまったんですか? 
     面白いものが見れると思ってワクワクしていたんですけど。」

ユアン:「ミュゲさんも相変わらずですね。」

ミュゲ:「ふふふっ、そうかしら?」

リヴィエール:「ケッ、見せもんじゃねぇぞ。」

ミュゲ:「そうなんです? 残念ですね。」

リヴィエール:「このアマ・・・。」

ヌーヴェン:「落ち着けと言ってる。」

ミュゲ:「うふふ。」

ヌーヴェン:「・・・(小さく吐息)」

スレイヴ:「お、来たみたいだな。」


(ナグラーダとマクタバが入ってくる)

マクタバ:「失礼する。」

ナグラーダ:「こちら側から招集をかけたにも関わらず、遅れてすまないわ。」

ミュゲ:「いいのよ、面白いもの見れましたから。ふふふ。」

ナグラーダ:「何かあったの?」

ユアン:「い、いえ。問題は無いです。」

ナグラーダ:「そう。ではマクタバ将軍、初めて。」

マクタバ:「御意、これより出席を確認する。
      北(シャマール)の氷山の熊(イスベルグ アルクトス)団長
      ヌーヴェン=モンタス殿。」

ヌーヴェン:「はい。」

マクタバ:「東(シャルク)の荒野の猟犬(デシエルト ケイヴツァイド)団長
      リヴィエール=アティザズ殿。」

リヴィエール:「おう。」(機嫌悪そうに)

マクタバ:「南(ノトス)の大洋の鯱(オセアーノ エポラール)団長ミュゲ=アストロン殿。」

ミュゲ:「ふふ、はぁい。」

マクタバ:「西(デュシス)の蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)団長
      スレイヴ=グローリア殿。」

スレイヴ:「どうも。」

マクタバ:「この度の重要参考人として、西(デュシス)の蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)から
      団員ユアン=イグニス殿の出席を認める。」

ユアン:「は、はい。」

ナグラーダ:「全員揃っているわね。ギルド協会総督、
       ナグラーダ=フロイデの名の元、召集に応じて頂き感謝します。
       今回は私と、軍最高責任者である
       星の騎兵(アステール カヴァレリア)軍所属、
       マクタバ=サージュ将軍と議会を進めるわ。」

マクタバ:「・・・。」(小さく礼をする)

ナグラーダ:「早速だけど、二日前の襲撃時の状況を、各ギルドで報告して欲しい。」

ミュゲ:「私からですね。最初は一発目の爆発地域、
     西(デュシス)周辺を動き回って居たのですけど。
     西(デュシス)の燕(シュヴァルベ)さんからの伝令で
     二発目の東(シャルク)方面に向かったわ。
     一発目程の破壊力は無かった見たいですけど、結界の破壊は当然、
     少数の魔物が潜入していましたから、一掃しました。」

ナグラーダ:「民間人からの怪我人は?」

ミュゲ:「今の所報告されてませんわ。こちらからは以上です、ふふ。」

リヴィエール:「俺の報告は南(ノトス)と一緒だ。」

ナグラーダ:「分かったわ。西(デュシス)と北(シャマール)は。」

ヌーヴェン:「報告は西(デュシス)のスレイヴさんに一任している。」

スレイヴ:「んじゃ、俺が。一発目による結界の破損は思っていた以上にデカかった。
      幸い、襲撃されたのが西(デュシス)と北(シャマール)の中間地点だったお陰で、
      迅速に団員を動かすことが出来た。民間人の保護を最優先にした上で、
      次に周辺地域の捜索と侵入した魔物の一掃。
      だが、想定外で手間取ったのは民間人の避難だ。」

マクタバ:「うむ、一般人による多数の混乱は、更なる被害を招きかねぬ。」

ナグラーダ:「そうね。スレイヴ殿他には?」

スレイヴ:「俺達現場の報告は此処までだ。爆発当時にナグラーダじょ・・・
      フロイデ宰相の指示を仰ぎに、うちの団員を走らせたのは知ってるよな。」

ナグラーダ:「えぇ。」

マクタバ:「やはり、貴殿の計らいであったか。」

スレイヴ:「面倒事を避けたかっただけだよ。」

リヴィエール:「ケッ、偉そうにしやがって。」

スレイヴ:「特に、東(シャルク)の大将は、俺の話を聞く気ねぇだろ?」

リヴィエール:「あん?」

スレイヴ:「くく、冗談だ。」

リヴィエール:「チッ、一々癇に障る野郎だな。」

ミュゲ:「あら、始まっちゃいますか? ふふ。」

ナグラーダ:「貴方達、場を慎みなさい。」

全員:「・・・・・。」

マクタバ:「(咳払い)それではユアン=イグニス殿、報告を。」

ユアン:「既に皆さんはご存知かもしれませんが
     到着した時には襲撃事件の共犯者であろう人物が居ました。」

ナグラーダ:「・・・確か貴殿は“オルフィス”と呼んでたわね。」

ユアン:「はい。彼の言った通り、昔から知っている人物です。
     僕は元々シルヴェスタの出身で、数年前に此処、フラーテルに。」

ミュゲ:「あらぁ、その襲撃者以外に目撃されたもう一人の方も
     シルヴェスタの出身のようでしたよ?」

ナグラーダ:「ん? どういうこと?」

ミュゲ:「私が察するに、そちらの襲撃者さんも“白馬の紋章”を
     身に付けていたのでは無いのでしょうか?」

ナグラーダ:「っ!」

スレイヴ:「“も”って事はもう一人の目撃者も同等と思っていいんだな。」

ミュゲ:「ふふっ。」

ユアン:「確かに、彼は“白馬の紋章”を身に着けていました。」

リヴィエール:「ってことは、何だ。王都からの襲撃って事か。」

マクタバ:「否。シルヴェスタとは協定中故、そのような筈は。」

スレイヴ:「・・・・。」

ミュゲ:「それも、そうなんですけど。
     襲撃者さんとお知り合いのユアン君は
     どういう位置づけになるんでしょうか? ふふふ。」

リヴィエール:「密告者か。」

ユアン:「それは、違います。」

リヴィエール:「根拠は?」

ユアン:「彼には、過去に一度殺されかけました。
     それに、その後の7年間は全く接触していません。」

ナグラーダ:「証拠はあるの?」

ユアン:「っ・・・。証拠は、ありません。」

ミュゲ:「あらあら。どうしましょうか。」

スレイヴ:「まぁ、あれだ。襲撃者は王都の人間、若しくは
      それを偽った何らかの組織かもしれねぇって結論でいいんじゃねぇか。」

ミュゲ:「この中に裏切り者が居るかもしれませんのよ? それを放っておくんです?」

スレイヴ:「此処で探り合いしてても埒があかねぇだろ。」

ヌーヴェン:「今は話を進めましょう。」

ナグラーダ:「確かに、此処で探り合っても意味は無いわね。」

スレイヴ:「後は、今回の失敗を踏まえてからの
      今後の対策を考えるしかねぇだろ。」

ナグラーダ:「待って、スレイヴ殿の結論も強ち間違ってないわ。」

スレイヴ:「ん?」

リヴィエール:「適当に言い包めただけだろ。」

マクタバ:「ユアン殿に、全ての疑いを掛けるには、まだ早いという話だ。」

リヴィエール:「あん?」

ナグラーダ:「マクタバ将軍、あれを。」

マクタバ:「御意。」(紙筒を渡す)

ナグラーダ:「先日、ルミナシアから書状が届きました。」

ユアン:「ぁ・・・。」

スレイヴ:「・・・。」

ミュゲ:「ふふっ。」

リヴィエール:「ここは無信者の集りだぜ、今更なんだってんだ。」

ヌーヴェン:「確かにそうかもしれないが。」

ミュゲ:「どんな内容かしら? ふふふ。」

ナグラーダ:「『先日、法国ルミナシアは何者かに襲撃され多大な損害を被った。
        承知の上だろうが、我々四ヶ国は現在協定中である。
        しかし、事態は範疇を超えた域に達している。
        一度、各国の賢人と議会の場を催したいと・・・。』」

リヴィエール:「なんだそりゃ、分かりやすい挑発だな。」

ミュゲ:「うふふ。簡単に言えば、犯人を炙り出す為のお腹の探り合いですよね。楽しそう。」

スレイヴ:「つまり、他の国でも同じような事が起きているって事か。」

マクタバ:「いかにも。書状の内容が真実であれば。」

ユアン:「でも、僕たちと同じように
     襲撃者を目撃した人は居ないんでしょうか?」

ミュゲ:「もし、仮に分かっていれば、直接書状を送ってくる筈じゃないかしら。
     それをしないで四ヶ国それぞれ送っているということは? ふふ。」

ユアン:「他に目的があるって事ですか・・・?」

ミュゲ:「さぁ? うふふ。」

ヌーヴェン:「可能性として、或いは・・・。」

ナグラーダ:「えぇ、そういうことね。
      『各国の賢人、若しくは代行者には
       女神の加護を受けしモノを添えられるよう。』」

スレイヴ:「相変わらず、ルミナシアの女神に対する
      崇拝振りには敬服するぜ。」

ヌーヴェン:「失礼・・・加護を受けしもの、とは。」

ナグラーダ:「分かりやすく言えば、守護獣や精霊を目視出来る人のことね。」

ミュゲ:「確か、フラーテルの守護獣はピルカちゃんですよね?」

ナグラーダ:「そうよ。それで・・・先に結果から答えてしまうけど。
       フラーテルは、ルミナシアからの書状を受け入れる事にしたわ。
       不確定要素しかないのだけれど、
       先日の襲撃事件とは何らかの関係性を感じざるおえないの。」

マクタバ:「可能性に掛けるという分けですね。」

ナグラーダ:「そういうことよ。けれど、私とマクタバ将軍は
       今、ここを離れるわけには行かない。」

ミュゲ:「そういう事ですかぁ。」

ヌーヴェン:「街は落ち着いたとはいえ、片付けなければならない事は山とある筈。」

リヴィエール:「そりゃ、そうだ。」

スレイヴ:「って事は、代行を立てるのか?」

ナグラーダ:「えぇ、その為の議会でもある。
       ルミナシアはギルドに協力要請も申し出しているわ。
       だから、力を添えるかそうでないかの判断も、その者に託したいと思うの。」

ユアン:「議会への参加は、各国への視察も込めてという事で良いんですか?」

ナグラーダ:「そう。さっきも言ったとおり、
       この書状には、最低条件として
       女神の加護を持った者と記載されている。」

ヌーヴェン:「っと、言いますと。」

ナグラーダ:「マクタバ将軍、“彼女”を此処へ。」

マクタバ:「御意。」

(会議室の扉を開けると小さな妖精が現れ、中に入ってくる。)

ピルカ:『お邪魔します。』

ユアン:「っ!」

リヴィエール:「あん? 誰も入ってこねぇぞ。」

ナグラーダ:「此処で貴方達を試させて貰うのは大変申し訳ないけれど、
       この中でピルカが見えるものは居る?」

ミュゲ:「私は、常日頃から気配を感じては居ますけど、
     姿で見たことはないです。残念。」

リヴィエール:「なんの話だ?」

ピルカ:『この二人には見えてないみたい。』

ナグラーダ:「そう、貴方達は?」

(ピルカは一人ずつ確認するように飛びまわっている)

ピルカ:『ふふっ。』

スレイヴ:「・・・はて。」(そっぽを向いている)

ピルカ:『じー・・・。』

ヌーヴェン:「・・・。」(目を瞑って黙り込む)

ピルカ:『始めまして。』

ユアン:「っ!? ふ、フロイデ宰相。 この妖精がピルカ、ですか?」

ナグラーダ:「えぇ、そうよ。
       見えている者には分かっているでしょうけど。
       今、そこにいる妖精こそが、我が国の守護獣ピルカ。」

ユアン(M):「この妖精が、守護獣・・・。」

ピルカ:『後は、みんな見えてるみたい。クスッ。』

ナグラーダ:「ありがとう、ピルカ。
       では、スレイヴ殿、ヌーヴェン殿、ユアン殿、三名から選抜します。」

マクタバ:「フロイデ宰相、三名のうち二名はギルド団長。
      席を空けるわけには行かぬのでは。」

ナグラーダ:「分かっているわ。」

リヴィエール:「理解できるように、説明しろ。」

マクタバ:「女神の加護を持つ者。即ち、ピルカが見えるものに限る。という事だ。」

ミュゲ:「なぜか悔しいですね。面白そうな任務だったのに。」

リヴィエール:「っつー事はなんだ。俺と、南(ノトス)の野郎は、
        その代行任務とやらから外されたってか?」

マクタバ:「察しの通りだ。」

リヴィエール:「そりゃ清々したぜ。俺も暇じゃないんでね。寧ろ助かったぜ。」

ミュゲ:「ふふふっ。」

リヴィエール:「そうと決まりゃ、こんな辛気臭ぇ所にいつまでも居られるかよ。
        帰らせてもらうぜ。」

ミュゲ:「参加出来ないなら聞いてても面白くないですものね。」

マクタバ:「待たれよ、話はまだ終わっておらぬぞ。」

リヴィエール:「色々決まったら報告頼んだぜ。」(去る)

ミュゲ:「御機嫌よう、ふふ。」(去る)

スレイヴ:「ったく、若者はせっかちだなぁ。」

マクタバ:「っ・・・」

ナグラーダ:「マクタバ将軍、構いません。話を進めるわよ。」

マクタバ:「御意・・・。」

ナグラーダ:「残って貰った三名の内スレイヴ殿、ヌーヴェン殿両名はギルド団長。
       現在はこちらも深手を負っている状態、余り戦力を削ぐ訳には行かないわ。
       だから、この代行任務はユアン殿に委ねたいと思う。」

ユアン:「フロイデ宰相、僕はそんな大任をなせる器ではありません。」

ピルカ:『・・・?』

ナグラーダ:「申し訳ないけど、これは宰相命令よ。
       それに、先ほど判明した襲撃者との関係性からして、
       今一番疑われているは・・・あなた自身。」

ユアン:「っ。」

スレイヴ:「・・・・。」

ナグラーダ:「その潔白を証明する為にも行ってもらいたい。
       スレイヴ殿の情報通りなら、任せても問題は無いわ。」

マクタバ:「仰るとおりで。」

ユアン:「スレイヴ、何を言ったの?」

スレイヴ:「何か言ったかな? 歳のせいで、最近物忘れが多くてな。」

ユアン:「・・・・(小さく溜息)分かりました。」

マクタバ:「決心はされたか。」

ユアン:「はい、代行任務。遂行させて頂きます。」

ナグラーダ:「ユアン殿、感謝するわ。
       安心して、一人で行かせるような強行はしないわ。
       出来れば・・・
       今居るギルドの人員を一人ずつ割いて貰いたいのだけど、
       適任は居るかしら?」

スレイヴ:「ユアン。」

ユアン:「なに?」

スレイヴ:「誰が適任だと思う? お前が選べ。」

ユアン:「・・・少し時間が欲しいかな。」

スレイヴ:「ふっ、分かった。フロイデ宰相。」

ナグラーダ:「何かしら。」

スレイヴ:「出発はいつだ。」

ナグラーダ:「三日後よ。それで氷山の熊(イスベルグ アルクトス)からは?」

ヌーヴェン:「申し訳在りませんが、こちらから割ける人員はおりません。」

ナグラーダ:「そう。ならば、どうにかしてマクタバ将軍に・・・」


(突然入ってくる)

ハザル:「その必要は無い。」

スレイヴ:「ん?」

ヌーヴェン:「・・・誰だ。」(武器に手を添える)

ユアン:「あの時の。」

ナグラーダ:「貴方は・・・。」

ピルカ:『っ!!』(喜の驚き)

マクタバ:「フロイデ宰相、御下がり下さい。」(武器に手を添える)

ハザル:「戦う意志はない。」

スレイヴ:「得物を納めて欲しいなら、それなりの礼儀は必要なんじゃねぇか?」

ハザル:「・・・・。」

ナグラーダ(M):「ピルカ・・・、この人物に危険は無い?」

ピルカ:『大丈夫だよ、ナグラーダ。 この人にも私は見えてる。』

ナグラーダ:「わかった。マクタバ将軍、ヌーヴェン殿。どうか武器を収めて欲しい。」

ヌーヴェン:「了解した。」

マクタバ:「・・・御意。」

ナグラーダ:「私は、ランガルト共和国の宰相、ナグラーダ=フロイデ。
       確か・・・貴方は、襲撃者から私を助けて下さいましたね。」

ハザル:「・・・・。」

ナグラーダ:「どうか、貴方の正体を明かして下さいませんか。」

ハザル:「私は、ハザル=ジュリアス。」

ピルカ:『ハザル・・・。』

ハザル:「シュティレーゼには、私が同行する。」

ヌーヴェン:「何を言い出すかと思えば・・・。」

スレイヴ:「くくっ。」

ユアン:「スレイヴ、どうしたの?」

スレイヴ:「いんや。ナグラーダ嬢、
      こいつに頼んでも大丈夫なんじゃないか?」

マクタバ:「スレイヴ殿、突然何をっ。」

ナグラーダ:「待って、スレイヴ殿は何か知っているわね?」

ピルカ:『クスッ♪』

スレイヴ:「そういう訳じゃない、ハザルと言ったか? 
      そいつの周りで嬉しそうに飛び回ってる
      ピルカを見てそう思ったんだよ。」

ピルカ:『懐かしい気配。ふふっ。』

ハザル:「・・・・・・。」

ユアン:「・・・確かに嬉しそう。」

マクタバ:「間違いないかと。」

ナグラーダ:「え、えぇ。その通りね。
       スレイヴ殿が言うなら問題なさそうだけど。」

スレイヴ:「そりゃ良かった。」

ユアン:「スレイヴはフロイデ宰相と仲が良いんだね。」

スレイヴ:「それこそ、腐れ縁って奴だ。 んでどうするんだ?」

ハザル:「・・・・・。」

ナグラーダ:「絶対に裏切らないという根拠はあるかしら。」

ハザル:「・・・。」

ピルカ:『彼は傭兵だよ。』

ナグラーダ:「ピルカ・・・、金で雇えって事?」

ハザル:「金は要らない。」

スレイヴ:「ハザル。今日始めて会ったような相手から、
      それなりの信用を勝ち取るってのは難しいぞ。」

ヌーヴェン:「その通りだと思います。」

スレイヴ:「それに、こいつが行くってのなら話しは別だ。
      素性も分からん傭兵に一国の内情を任せるわけにはいかねぇだろ。」

ハザル:「・・・・っ。」

ユアン:「それって・・・。」

スレイヴ:「あぁ、俺が付添い人として行く。
      どちらにせよ監視は必要だろうし、
      こいつに何かあったときに責任取れる奴が一人は必要だろ。
      
      ただし、もし俺に何か起きた時の為に、
      ピンチヒッターとしてこいつを雇わせてもらうがな。」

ナグラーダ:「分かりました。
       スレイヴ殿が行くのであれば安心出来るわ。
       けど、ご自分のギルドはどうするつもり?」

スレイヴ:「ま、そこが問題だよな・・・。」

マクタバ:「ふむ・・・(少し考えて)
      ならば、スレイヴ殿が抜けた穴は、拙者が承ろう。」

ナグラーダ:「マクタバ将軍!?」

ピルカ:『?』

スレイヴ:「そりゃまぁ、俺としてはこれ以上ないありがたい話だが・・・。
      それこそ、戦力を削ぐ事にならねぇか?」

マクタバ:「仰る通りです。そこでフロイデ宰相にご提案が。」

ナグラーダ:「なにかしら?」

マクタバ:「今回の襲撃によって損壊した地区の復興作業は未だ手付かずのまま、
      それ故、復興作業の際、指揮所を西(デュシス)地区に配置して頂きたい。」

ナグラーダ:「そうね、元々任せようと思っていた案件だけど・・・、
       成る程、西(デュシス)地区に・・・。」

マクタバ:「西(デュシス)の屯所に常駐しながら指揮をとる分には、
      公務に支障は出ぬ筈。
      その傍らで蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)の管理を行えば、良いものかと。」

ナグラーダ:「・・・そうね。
       スレイヴ殿が付添い人として同行してくれるのであれば
       そちらの心配事も無用になるわけだし。
       (小さい吐息)仕方ないわね、足りない部分は私が何とかするわ。」

スレイヴ:「ナグラーダ嬢、マクタバ将軍。世話になるな。」

ナグラーダ:「いいえ、世話になるのはこちらも同じ。気にしないで。
       それと、傭兵ハザル=ジュリアス。」

ハザル:「・・・?」

ナグラーダ:「貴方を代行任務の同行者として認めますが、
       おかしな真似はしないように。分かるわね?」

ハザル:「・・・あぁ。」

ナグラーダ:「ユアン殿、構わないわね?」

ユアン:「は、はい。」

スレイヴ:「長旅になる、準備はしっかりしておけよ。」

ユアン:「分かった。」

マクタバ:「フロイデ宰相の代行、頼み申した。」

ユアン:「最善を尽くしてきます。」

スレイヴ:「ん、良い心がけだ。」

ヌーヴェン:「頼もしい限りです。」

ナグラーダ:「これから急ぎで必要なものを用意するわ。
       準備出来次第、従者に届けさせるから。」

ユアン:「はい、分かりました。」

ナグラーダ:「それじゃ、慌しくて申し訳ないけど、私はこれで失礼するわね。」

スレイヴ:「お疲れさん。」

ヌーヴェン:「了解した。」

ユアン:「あ、お疲れさまです。」

マクタバ:「ギルド協会、緊急議会をこれにて終了とする。」

ナグラーダ:「マクタバ将軍、次の議会に行くわよ。」(去る)

マクタバ:「御意、では各自解散を。」(去る)





ピルカ(M):『風が噂をする、旅人は誰ぞ。木々が囁く、それぞれの異変を。
       大地が震え、恐怖する。空が泣いて、天を仰ぐ。
       そして・・・アルシャディアが始まる。』





スレイヴ:「どういう風の吹きまわした?」

ハザル:「理由は無い。」

スレイヴ:「ハザル=ジュリアスだっけか。」

ハザル:「・・・・。」

スレイヴ:「・・・(小さい吐息)成る程。」

ハザル:「・・・・(フードを下ろす)
     貴方に、アルシディアはどう映っている。」




リヴィエール:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』第7話 優しき獅子」


マクタバ:「この国の未来は貴殿に託されている。どうか御健闘を。」

ユアン:「はい。」










もどる