『Histoire of Eternto−イストワール オブ エテルノ−』

第7話 優しき獅子

≪登場人物≫

ベルヴァルク♂(28歳):帝都センテリオ、オルディネガルデリア軍 将軍
レヴァンダ♀(25歳):帝都センテリオ、オルディネガルデリア軍 副将
メルクーア♀(38歳):帝都センテリオ、宰相であり、宮廷魔術師
ロジック♂(35歳):帝都センテリオ、オルディネガルデリア軍 中将
皇帝♂(48歳):帝国オルディン、帝都センテリオの現皇帝。
ニエンテ♂(??):獅子のような大男。だがとても温厚な口調。
エーレ♂(26歳):自由と冒険をこよなく愛する弓使い。
ツェッカ♀:小さな妖精。


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キャラクター詳細や世界観は此方で確認お願いします。


【役表】

ベルヴァルク:
レヴァンダ:
エーレ:
ツェッカ♀:
メルクーア♀:
皇帝:
ニエンテ:
ロジック:
兵士:



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≪大きな廃城跡≫

(片膝を着いて祈りを捧げている)

エーレ:「・・・(小さく息を吐く)」

ツェッカ:『エーレ、本当に良いの?』

エーレ:「あぁ。」

ツェッカ:『暫く此処には帰って来れなくなるのね。』

エーレ:「な〜に、その気になればいつでも帰ってこれる。
     それが故郷ってもんだろ。」

ツェッカ:『寂しくない?』

エーレ:「あぁ、一生の別れってわけじゃないからな。」

ツェッカ:『そ、そうだよね!』

エーレ:「ふっ(立ち上がりながら微笑)
     ・・・さて、女神さんに祈りも済んだし
     俺達も運命の歯車って奴に振り回されてみるとするか。」

ツェッカ:『うん。』

エーレ:「まずは、守護獣に会う事が最優先だ。」

ツェッカ:『目指すは帝国オルディンね。』

エーレ:「あぁ。」

ツェッカ:『私達の目的が終わった後は、どうするの?』

エーレ:「そうだな。それこそ
     運命の流れ行くままにって感じで。」

ツェッカ:『もうっ・・・(呆れた溜息)』

エーレ:「よし。んじゃ、俺らは俺らで、
     ご先祖様の力とやらを借りてくとすっかね。」

ツェッカ:『そんなに不完全なモノで良いの?』

エーレ:「まぁ、大丈夫だろ。
     このまま放置しといても宝の持ち腐れだ
     良いモノほど良く使えってね。」

ツェッカ:『ごめん。私の力じゃ完全に目覚めさせる事は出来ないの。』

エーレ:「十分。眠ってる状態よりは幾分マシだ。
     後は俺の腕次第って所だな!」

ツェッカ:『エーレの腕なら心配いらないと思うわ。』

エーレ:「当ったり前だろ。」(微笑)

ツェッカ:『でも・・・何れ(いづれ)は
      彼女にも会わないといけないわね。』

エーレ:「ん?」

ツェッカ:『女神ヴァレスティア様の信託を受けし聖女。』

エーレ:「そうだな。聖女さん美人だったら
     わざわざ会いに行く甲斐があるんだけど・・・。」

ツェッカ:『エーレっ!?』(頬を膨らませ)

エーレ:「・・・っと、時間だ(誤魔化す)
     そろそろ出発するか。」

ツェッカ:『あ、ちょっと待って。』

エーレ:「どうした、忘れ物か?」

ツェッカ:『うん・・・。』
    




ニエンテ(N):「ディムアルサの眠る地。セアカルディア。

        そこは嘗て、女神ヴァレスティアに罪を問われ
        外界からも咎人と刻印を刻まれた者達が歴史を紡いで来た大地。

        歪な過去と共に忘れ去られ、未知と化した外界から
        混沌と渦巻くアルシャディアへ・・・己の運命と共に。」





ツェッカ(N):『しばしのお別れね、セアカルディア。』





エーレ:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
      第7話 優しき獅子」





≪帝国オルディン・帝都センテリオ≫





皇帝:「・・・メルクーア、どう思う。」

メルクーア:「っと、申しますと?」

皇帝:「アルシャディアの異変についてだ。」

メルクーア:「・・・皇帝陛下。申し上げますが、それを調査する為に
       将軍自らが先遣隊として各地を回っているのではないですか。
       何を憂虞されているのです。」

皇帝:「魔物の増加だけではない。月闇都市カエシウスの緑は枯れ始め、
    砂漠都市アルヘオでは強い日照りにより水脈が細くなり、倒れる者も多いと聞く。
    その上、ここ数年の農作物の収穫量は減ってきている。」

メルクーア:「確かに、このままこの状況が続くのであれば何れ、
       民の不満は増え続け暴動のきっかけになり兼ねません。」

皇帝:「・・・民を救う術は無いのか。」(頭を抱える)

メルクーア:「女神は、我々を試されているのやも・・・。」

皇帝:「どういう事だ。」

メルクーア:「天地戦争から2000年の間、
       女神の加護に護られ、女神の指し示す運命に導かれて来ました。
       ・・・それを終えるべきでは。」

皇帝:「再び己の足で歩むべき時代が来ると?」

メルクーア:「はい、“可能性として”ですが。」

皇帝:「しかし、どうやって・・・。」

メルクーア:「女神の・・・」

(ノック音で言葉を遮る)

メルクーア:「っ。・・・入りなさい。」

ロジック:「お話中失礼。」

メルクーア:「ロジック中将、どうしました。」

ロジック:「将軍が戻られたんで、ご報告に。」

皇帝:「そうか、ご苦労だった。」

ロジック:「どうも。」

皇帝:「メルクーア、その話はまた後程。」

メルクーア:「畏まりました。 所で陛下、何処へ行かれるのですか?」

皇帝:「将軍の所へ行ってくる。」

メルクーア:「分かりました。余りご無理はなさらぬよう。」

皇帝:「ん。」

(皇帝が立ち去る。)

ロジック:「再び己の足で歩むべき時代が、本当に来るかねぇ。」

メルクーア:「・・・お主は、人が女神の存在を完全に否定出来ると思っておるのか。」

ロジック:「思うだけじゃダメだ。 実行に移さねぇと。」

メルクーア:「・・・?」

ロジック:「先ずは、完全に否定する所からだ。」(不敵な笑みをする)





≪帝国軍屯所の外≫





レヴァンダ:「ガードナー将軍、お帰りなさいませ。」

ベルヴァルク:「あぁ。」

レヴァンダ:「私も今し方戻ったばかりです。」

ベルヴァルク:「丁度いい。オルグリオ副将、報告を聞こう。」

レヴァンダ:「はっ。」

(遠くから歩いてくる)

皇帝:「報告なら私も聞こうか。」

ベルヴァルク:「皇帝陛下、恐れ入ります。」

レヴァンダ:「皇帝陛下、お一人でこの様な場所に・・・」

皇帝:「(食い気味)あぁ、気にするな。 続けてくれ。」

レヴァンダ:「っ、御意。(敬礼する)
       やはり、昨年に比べ増加傾向があります。
       その影響もあってか、キャラバンによる物資の流通が減り
       各地の生活水準も低下しているようで、民からの不満の声も。」

皇帝:「・・・ふむ。」

ベルヴァルク:「・・・。この事態が落ち着くまでは
        街道の警備を強化する他ないだろう。」

レヴァンダ:「はっ、畏まりました。」

皇帝:「魔物の増加に対しての解決策は見つかりそうか。」

ベルヴァルク:「残念ながら、現段階では。」

皇帝:「分かった。 では・・・」

(兵士が走ってきて話しに割ってはいる)

兵士:「お話中失礼致します!」

レヴァンダ:「どうした。」

兵士:「宰相殿からの言伝で、至急皆様にお集まり頂くよう仰せつかって参りました!」

皇帝:「メルクーアから?」

レヴァンダ:「分った。
       私とガードナー将軍は暫く此処を空ける。」

兵士:「畏まりました!」

ベルヴァルク:「皇帝陛下、参りましょう。」

皇帝:「あぁ。」





≪皇帝宮、会議室にて≫





(少し早足で会議室に入る)

皇帝:「メルクーア、一体何事だ。」

メルクーア:「皆様お集まり頂き有難うございます。
       先ずはご着席下さい。」

皇帝:「ん。」(座る)

ベルヴァルク:「・・・。」

レヴァンダ:「失礼致します。」

メルクーア:「全員お座りになりましたね。
       
      (自分だけ立ち上がると皇帝の近くまで行き紙を差し出す)
  
       先ずは、これを。」

皇帝:「これは?」

メルクーア:「先程、法国ルミナシアから送られてきた書状で御座います。」

レヴァンダ:「ルミナシアから・・・。」

皇帝:「・・・・。」(書状を開いて暫く読む。)

全員:「・・・・。」

皇帝:「・・・ふむ。」(小さいため息混じり)

ベルヴァルク:「オルグリオ副将。読み上げろ。」

レヴァンダ:「はっ。 皇帝陛下お借りいたします。」

皇帝:「(頷く)」

レヴァンダ:「『先日、法国ルミナシアは何者かに襲撃され多大な損害を被った。
        承知の上だろうが、我々四ヶ国は現在協定中である。
        しかし、事態は範疇を超えた域に達している。
        一度、各国の賢人と議会の場を催したいと・・・。』」

ベルヴァルク:「っ。」

レヴァンダ:「『各国の賢人、若しくは代行者には
        女神の加護を受けしモノを添えられるよう。』」

メルクーア:「捕らえ方によっては、此方を疑っている様にも読み取れますが・・・
       一体どういうことでしょう。
       わらわの知らぬ所で秘密工作でもされているのですか?」

ベルヴァルク:「覚えが無いな。」

レヴァンダ:「宰相殿、お言葉ですが。 
       現在我々が置かれている状況からすれば、
       他国に手を出す事に一つのメリットも御座いません。
       何かのお間違えでは。」

メルクーア:「・・・だと良いのですが。」

ベルヴァルク:「逆に問うが、そちらはどうなんだ。」

メルクーア:「わらわを疑っておられるのか、それこそ甚だしい事です。」

皇帝:「双方ともやめないか。」

メルクーア:「・・・失礼しました。」

ベルヴァルク:「・・・。」

皇帝:「我が国に謀反者がいるとは思いたくないが
    調べてみる必要はありそうだ。 ・・・レヴァンダ。」

レヴァンダ:「はい。」

皇帝:「手配を頼めるか。」

レヴァンダ:「畏まりました。」

メルクーア:「陛下。もう一つ、妙な噂を耳にしたのですが。」

皇帝:「妙な噂?」

メルクーア:「共和国ランガルドにある首都フラーテルも襲撃されたようです。」

レヴァンダ:「っ!」

ベルヴァルク:「確か、オルグリオ副将の故郷も近くにあったな。」

レヴァンダ:「は、はい。」
    
皇帝:「メルクーア、フラーテルの様子はどうなっている?」

メルクーア:「現在復旧作業中ですが、落ち着きを取り戻していると。」

皇帝:「・・・ふむ。 一先ずは安心、という所か。」

レヴァンダ:「皇帝陛下、心遣い感謝致します。」

ベルヴァルク:「フラーテルを襲った犯人は?」

メルクーア:「情報はまだ掴めておりません。」

ベルヴァルク:「・・・。」

皇帝:「シュティレーゼに続きフラーテルまで・・・。
    何かが動き出そうとしているのか。」

レヴァンダ:「もし、同じ内容の書状が各国に送られているのだとしたら
       四ヶ国会議でその真相も掴めるかも知れません。」

皇帝:「そうだな。 今焦ったとしても良い答えは出ないだろう。」

メルクーア:「陛下、議会への参加の方ですが・・・。」

皇帝:「あぁ。 確か条件が女神の加護をっげほげほっ。」

レヴァンダ:「っ!」

ベルヴァルク:「皇帝陛下。」(すっと立ち上がる)

皇帝:「ごほっ、そのままでよい。」(手を挙げ止める)

ベルヴァルク:「はっ。」

レヴァンダ:「近頃、お体の調子が余り良くないとお聞きしましたが。」

メルクーア:「えぇ、陛下のご病気は余り芳しくありません。
       今日は少し調子が良い様ですが 
       遠方に出られる程の体力は無いかと。」

皇帝:「・・・ベルヴァルク。」

ベルヴァルク:「・・・はい。」

皇帝:「確か、女神の加護を受けていたな。」

ベルヴァルク:「恐れながら。」

皇帝:「けほっ。 此度の公務、お前に任せたいと思っている。」

ベルヴァルク:「・・・。」

皇帝:「この通り、自由の利かない身だ。 私の代わりを頼めるか?」

ベルヴァルク:「・・・御意。」

皇帝:「レヴァンダも補佐として同行するように。」

レヴァンダ:「お任せ下さい。」

皇帝:「・・・ん。」

メルクーア:「話しは纏まりましたね。
       陛下、次の公務が御座います。その前に少し休まれるよう。」

皇帝:「分った。 では二人とも、後の事は任せたぞ。」

ベルヴァルク:「御意。」
レヴァンダ:「御意。」

メルクーア:「さぁ、陛下。 わらわの肩にお捕まり下さい。」

皇帝:「あぁ、すまない。」


(二人が去るのを見送る。)


レヴァンダ:「ガードナー将軍。どう思われますか。」

ベルヴァルク:「どう、とは?」

レヴァンダ:「あ、いえ。」

ベルヴァルク:「・・後ろめたい事があれば別だが。」

レヴァンダ:「そのような事は・・・。」

ベルヴァルク:「ならば、己を信じるのみ。」

レヴァンダ:「・・・はい。」

ベルヴァルク:「幸い、今の所不穏な動きは捉えていないが
        警戒は怠るな。」

レヴァンダ:「畏まりました。」

ベルヴァルク:「(席を立つと)・・・少し出掛けて来る。」
 
レヴァンダ:「はい。 私は遠征の準備を整えて参ります。」

ベルヴァルク:「(頷く)頼んだ。」





≪船上≫





ツェッカ:『島がどんどん遠くなってく。』

エーレ:「いい眺めだな。」

ツェッカ:『・・・うん。 綺麗。』

エーレ:「アルシャディアに比べたらちっぽけな島だろうけど。
     俺達にとっちゃ大切な故郷だ。」

ツェッカ:『うん。』

(船上の手摺に身を任せながら暫くの間島を眺めている)

エーレ:「なぁ、ツェッカ。」

ツェッカ:『なに?』

エーレ:「守護獣や精霊に科せられた運命に
    “得過ぎる知識は世を亡ぼす”って言葉があるよな。」

ツェッカ:『運命の鎖の事?』

エーレ:「あぁ。 それってどの程度の規制があるんだ?」

ツェッカ:『・・・それが、私達にも分からないの。』

エーレ:「へ?」

ツェッカ:『・・・なんだろう。 
      喋ってはいけない事には自然とフィルターがかかる感じ。』

エーレ:「その時々で違う場合もあるのか?」

ツェッカ:『う〜ん・・・。 多分。』(自信なさげに)

エーレ:「結構曖昧なんだな。」

ツェッカ:『そうかもしれない。たまにあるの。
      この前はダメだったのに今は良い、とか。』

エーレ:「へぇ・・・。」

ツェッカ:『だから、帝都に行って守護獣に会えたとしても
      ちゃんとした話しが出来るかも分からないわ。』

エーレ:「・・・だとしても、何もしない分けにはいかないだろ?」

ツェッカ:『・・・うん。』

エーレ:「無い物にすがるよりは、
     少しでも可能性があるなら、それに掛けた方が希望が見えるってもんだ。」

ツェッカ:『そう、だよね。』

エーレ:「ははっ。なぁに、会う前から暗くなってるんだよ。 
     大丈夫、何とかなるって。」

ツェッカ:『エーレ、頼りにしてるから。』

エーレ:「あぁ、任せろよ。」(微笑)





≪帝国オルディン・とある場所≫

(腕を組んで高台から帝都を見下ろしているニエンテ、
 その後ろから現れるベルヴァルク)





ニエンテ:「・・・。」

ベルヴァルク:「余程の物好きだな。」

ニエンテ:「・・・何がだ?」

ベルヴァルク:「お前はいつも此処から帝都を眺めている。」

ニエンテ:「何かをする訳でもなく。」

ベルヴァルク:「あぁ。」

ニエンテ:「そちらも、いつも此処に顔を出すが。」

ベルヴァルク:「一番見晴らしが良いからな。」

ニエンテ:「ふっ。 我も同じ理由だ。」

ベルヴァルク:「・・・そうか。」 
      
ニエンテ:「こうして人々の営みを眺めているだけで時を感じる事が出来る。」

ベルヴァルク:「そうやって、どれくらいの時間を過ごしてきた。」

ニエンテ:「さて・・・、お主が生まれる前からと言ったら?」

ベルヴァルク:「・・・。」

ニエンテ:「不思議なのだろう。 
      お主が何十年と通い続けていたこの場所に
      何時もいる男の姿見が、少しも変わらぬことが。」

ベルヴァルク:「一体、何者だ。」

ニエンテ:「・・・初めて、その質問をしたな。」

ベルヴァルク:「・・・っ。」

ニエンテ:「我が名はニエンテ。」

ベルヴァルク:「・・・まさか。」

ニエンテ:「信じる信じないはお主が定める事。
      ・・・さて。」(組んでいた腕をほどき一歩踏み出す)

ベルヴァルク:「何処へ行く。」

ニエンテ:「何処へでも。」

ベルヴァルク:「・・・。」

(一瞬風が強く吹く)

ニエンテ:「風が嘆き、大地が震えている。
      地の底から、闇なる心(しん)を食い尽くすべく
      期を伺っていたかのように。」

ベルヴァルク:「警告か。」

ニエンテ:「・・・女神の加護を。」(答えずに去る)

ベルヴァルク:「・・・。」





ニエンテ(N):「神は、人々に最後の言葉を残した。
        
        “アルシャディアに危機が訪れし時、
         我が紡ぎし唄と共に神体を求めよ。
         さすれば、再び恩恵と繁栄を得られるだろう”と。
 
         それから、天地戦争と女神の誓約から平和が続き、
         2000の年月を経た現在。

         再び闇が動き出そうとしていた。」



エーレ:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』第8話 四ヶ国、円卓会議」










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