『Histoire of Eternto−イストワール オブ エテルノ−』

第11話 求める心

≪登場人物≫


エーレ♂(26歳):自由と冒険をこよなく愛する弓使い。
ツェッカ♀(??):小さな妖精。
ルチオ♂(30歳):魔学研究機関ヴァールハイトハルク 最高責任者
ヴァイゼ♀(30歳):王都エンジール、白銀騎士団エペイストリベルテ 副団長
ソルシェ♀(53歳):王国シルヴェスタ、王都エンジールの女王
ポラリス♂(20歳):魔学研究機関ヴァールハイトハルク 研究者助手
チェレネ♂(??):物腰柔らかそうな男性。性格は大人しく慈愛に満ち溢れている。


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キャラクター詳細や世界観は此方で確認お願いします。


【役表】

エーレ:
ツェッカ:
ルチオ:
ソルシェ:
ポラリス:
チェレネ:
ヴァイゼ:



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≪空中都市ソミュア・研究機関内≫



(走ってくる)

ポラリス:「はぁ、はぁ・・・!
      せ、先生! ルチオ先生!」

ルチオ:「騒がしいですよ。
     室内は走らないようにと言いましたよね。」

ポラリス:「す、すいません。急いでいたので・・・。」

ルチオ:「それで、どうかしましたか?」

ポラリス:「はぁ・・・至急、(唾を飲む)
      王都エンジールにお集まり下さい!」

ルチオ:「エンジールに?」

ポラリス:「女王陛下からのお呼び出しです。」

ルチオ:「・・・先日の地震と何か関係が?」

ポラリス:「恐らく。・・・ふぅ(息を整える)」

ルチオ:「分かりました。準備を手伝って下さい。」

ポラリス:「は、はい。」

ルチオ:「ところで、ポラリス。」

ポラリス:「な、なんでしょう。」

ルチオ:「少し運動不足のようですが。」

ポラリス:「うっ。」

ルチオ:「助手として尽くしてくれる君の姿勢には大変感激してますし
     助けられてばかりだとは思っていますよ。
     ですが、老婆心ながら少しは健康にも気を使ったほうが
     誰より自分の為になるのではないでしょうか。」

ポラリス:「うぐぐ、いや・・・。」

ルチオ:「あぁそれと、迂闊なタイミングで体を壊されるようなことがあっては、
     延いては今後の研究にも支障が出るかもしれません。
     そうなると私の生活にも
     退っ引きならない影響が・・・。」(微笑)

ポラリス:「わ、分かりましたから! 
      とにかく今は急いで下さい!」




≪王都エンジール≫



エーレ:「くぅううう!(伸びをする)
     やっ〜と着いた。はぁ」

ツェッカ:『丸一日馬車に揺られてたものね。
      気疲れしちゃったわ。』

エーレ:「宙に浮いてるのにか?」

ツェッカ:『気持ちの問題気持ちの問題。』

エーレ:「へぇ〜。ここが王都エンジールか。
     成る程、馬車のおっさんが言ってた通りだ。
     美女ぞろいだなぁ。」

ツェッカ:『もう、そればっかりなんだから!』

エーレ:「気持ちの問題だよ、気持ちの問題。」

ツェッカ:『むっ(膨れる)
      それで、王都まで来たけどどうするつもり?』

エーレ:「そうだな。・・・ツェッカ。」

ツェッカ:『なに?』

エーレ:「守護獣の気配を辿ることって出来るか?」

ツェッカ:『ん〜。何となく、なら。』

エーレ:「よし、会いに行くぞ。」

ツェッカ:『ちょ、ちょっと待って。
      会いに行くって・・・』

エーレ:「少し寄り道する心算で来たけど
     当初の目的だった帝国の守護獣が死んだんだ。
     他を当たるしかないだろ?」

ツェッカ:『そうだけど、何だか最初から躓いちゃったね。』

エーレ:「(微笑)大丈夫だって。
     前に言っただろ、何とかなるって。」

ツェッカ:『う、うん。』

エーレ:「兎に角。今は、やれる事をしよう。
     もしかしたら、それ以外の収穫もあるかもしれないからな。」

ツェッカ:『分かった。』

エーレ:「それで・・・、
     チェレネの気配はどこからする?」

ツェッカ:『あ、えっと・・・王宮の方から。』

エーレ:「りょーかい。(王宮の方を見上げて)
     さて、どうやって入るか。」

ツェッカ:『そうね、私のおまじないなら
      行けるかもしれないわ。』

エーレ:「まじない? そんなモノも使えるんだな。」

ツェッカ:『うん。このおまじないは、
      一時的にエーレの姿を周りから見えなくするものだけど・・・。』

エーレ:「それって、普段から使えるんだったら便利だよな〜。」

ツェッカ:『ただし、制約が多いから注意してね。』

エーレ:「せ、制約?」

ツェッカ:『乱用しすぎると、
      一生元に戻れなくなっちゃうのよ!』

エーレ:「お、おぅ。
     ・・・わかった、残念だ。」





ポラリス:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
      第11話 求める心」





≪王都エンジール≫



ソルシェ:「そうですか、分かりました。
      引き続き調査と報告をお願い致します。」

ヴァイゼ:「畏まりました。」


(扉が開き二名入ってくる)


ポラリス:「女王陛下、失礼致します!」

ソルシェ:「いらっしゃいましたね。」

ヴァイゼ:「ルチオ殿、ポラリス殿。
      お待ちしていました。」

ルチオ:「女王陛下、
     緊急の案件とお伺いして参上致しました。」

ソルシェ:「突然呼び立ててしまい申し訳ありません。」

ルチオ:「いえ、陛下の命令とあらば何時でも。
     それで・・・貴方が此処にいるという事は
     何か関係しているんですね。チェレネ。」

チェレネ:「えぇ。」

ソルシェ:「それではヴァイゼ、お願いします。」

ヴァイゼ:「畏まりました。
      ルチオ殿、先日の地震をご存知か?」

ルチオ:「えぇ、ソミュアの方でも観測致しましたので。」

ヴァイゼ:「それと時を同じくして、帝都が壊滅した。」

ポラリス:「か、壊滅!?」

ルチオ:「ほう・・・。」

ヴァイゼ:「帝都の守護獣であるニエンテの消滅も確認されている。
      その影響で帝都を含め帝国内各地で張られていた結界も完全に消え、
      魔物が蔓延っている大変危険な状態だ。
      現在は厳戒態勢が布かれ一切の入国を許されていない。」

ルチオ:「笑えない冗談ですね。守護獣が消滅・・・
     そんな事がありえるのですか?」

ソルシェ:「残念ながら冗談ではありません。
      チェレネが言うのですから、間違いないでしょう。」

ルチオ:「成る程、それは中々興味深いお話ですね。」

ヴァイゼ:「余り驚かれていない様子だな、ルチオ殿。」

ルチオ:「何故、ですか?」

ヴァイゼ:「たとえ疎遠になった土地だとしても貴殿からすれば唯一の故郷だ。
      それを失ったにも関わらず、そうも飄然としていられるとは・・・、
      理解に苦しむ。」

ポラリス:「ヴァ、ヴァイゼさんっ。 そんな言い方・・・。」

ルチオ:「(食い気味)哀愁に浸る暇が無い程に、
     私は多忙極まりないのですよ。 それではご納得頂けませんか?」

ヴァイゼ:「・・・くっ。
      貴殿は故郷を思う心すら持ち合わせては居ないのか。」

ポラリス:「わわっ。」(どうしよう、と慌てふためいている)

ルチオ:「勿論、あると思いますよ。
     少なくとも、貴方が思っている以上には。」

ソルシェ:「(食い気味)お二人とも、
      その様な言い争いは慎みなさい。」

ルチオ・ヴァイゼ:「・・・はっ。」

ポラリス:「あ、えっと。帝国に入れないって事は
      どういう状況になっているかも掴めてないんですよね?」

ヴァイゼ:「その通りだ。」

ルチオ:「これ程早く、第三勢力の存在が
     明らかになってくるとは思いもしませんでしたが。」

ポラリス:「備える間もなく、って感じですね。」

ヴァイゼ:「今、下手に動いて
      こちらの警戒の手を薄める訳にはいかない。」

ソルシェ:「ですが、事が重大ですから。
      私たちも早急に手を打たなければなりません。」

ルチオ:「陛下、何かご提案があるのですね。」
     
ソルシェ:「・・・はい。」

ルチオ:「分かりました。」

ソルシェ:「この王都エンジールには
      代々、王家が管理してきた神具が存在しているのはご存知かと。」

ルチオ:「・・・聖拳アヴァルク、ですか。」

ソルシェ:「(頷く)
      先日行われた円卓会議の内容が事実ならば
      “紡ぎし唄”と“選ばれし者”そして“神具”の
      三つが揃って意味を成すもの。 そうですね。」

ルチオ:「はい。 その中でも最も重要な“鍵(きー)”とされているのは
     “紡ぎし唄”の存在です。
     確証されている訳では在りませんが、
     神具に縁(ゆかり)の在る者や場所を探れば辿り着く事が出来る、と。」

ヴァイゼ:「だが、知っての通り我々の手元にあるのは
      その三つのうちの一つ、神具のみだ。」

ポラリス:「あの・・・。」

ヴァイゼ:「どうした?」

ポラリス:「チェレネは“紡ぎし唄”の居場所を知らないんですか?」

チェレネ:「残念ながら。 
      この地を離れてしまっている以上、私には。」

ポラリス:「では、縁(ゆかり)のある人物や場所と言うのは・・・。」

ソルシェ:「はい。 それこそが私からの提言となります。
      各国に散らばる紡ぎし唄と、神具の捜索への協力及び
      アルシャディア再生の為の最善策の前進として
      聖拳アヴァルクに関わる
     “紡ぎし唄”と“選ばれし者”への捜索を開始致します。」


(柱の物陰から姿を現す)


エーレ:「ひゅ〜♪ 思わぬ収穫だ。」

ツェッカ:『ちょ、ちょっとエーレ!』

ポラリス:「し、侵入者っ!?」

ヴァイゼ:「何者だ! 
      陛下、お下がりくださいっ。」(剣を構える)

エーレ:「待て待てって! 
     怪しい奴じゃないって。」(両手を挙げながら)

ヴァイゼ:「どうやって侵入したっ。」

エーレ:「えっと〜、妖精さんのおまじないで
     ちょちょいっと身を隠しながら。」

ヴァイゼ:「・・・む。」

エーレ:「お、怒った顔も魅力的〜!
     だが、美人は笑顔の方が似合ってるぜ?」

ヴァイゼ:「なっ・・・!」

ツェッカ:『まったくっ!』

チェレネ:「・・・貴女は。」

ツェッカ:『お久し振りです。チェレネ。』

ソルシェ:「ご存知なのですか?」

チェレネ:「はい。」

ルチオ:「・・・何やら訳在りのようですが。」

エーレ:「お、そこのお兄さん話が早いね。」

ルチオ:「ですが・・・盗み聞きとは感心しませんね。
     貴方の態度次第では厳罰も覚悟して頂かないと。」

エーレ:「うぐっ。」

ポラリス:「だ、誰か呼んできますか?」

ヴァイゼ:「まて、私がいるだろう。その必要は無い。」

ポラリス:「あ、そうでした・・・。すいません。」

ヴァイゼ:「・・・で、正体を明かして貰おうか。」

エーレ:「え〜、名前はエーレ=テナークス。」

ヴァイゼ:「他には。」

エーレ:「他に? ん〜・・・、あ。そ、そうだ。」

ヴァイゼ:「どうした。」(剣先を突きつけて)

エーレ:「聖弓アリオーン。
     こいつの持ち主・・・じゃだめか?」

全員:「っ!?」

ソルシェ:「それは本当ですか?」

エーレ:「勿論です、女王陛下。
     その証拠に、これが聖弓・・・」(弓に手を掛けようとする)

ヴァイゼ:「(遮る)動くんじゃない。」

エーレ:「へーい。」

ツェッカ:『女王陛下。』

ソルシェ:「何でしょう。」

ツェッカ:『私は“信頼と直感を紡ぎし精霊”ツェッカと申します。
      彼は“選ばれし者”です。』

ソルシェ:「貴女が“紡ぎし唄”。
      ・・・・いいでしょう、ヴァイゼ。
      剣を下ろしてください。」

ヴァイゼ:「はっ。」(剣をしまう)

エーレ:「ふぃ〜、危ない所だった(安堵の溜息)
     美人さんにじっと見つめられるのも悪くは無かったけどな。」

ヴァイゼ:「貴様、刻まれたいらし・・・。」

ポラリス:「お、落ち着いてくださいって!」

ヴァイゼ:「・・・。」(睨み付ける)

エーレ:「おぉっと、やり過ぎたか。」(苦笑)

ツェッカ:『もうエーレったら!』

ソルシェ:「・・・貴方達は何を目的として此処へ?」

ツェッカ:『あ、それについては私が説明を。
      元々、帝都にいる守護獣ニエンテに
     “知恵”を借りたくて帝国に向かっていたんですが・・・』

ソルシェ:「ニエンテは貴方達に会う前に消されてしまい、
      その代用としてチェレネの元へやって来た・・・と言う事ですね。」

ツェッカ:『仰る通りです。』

ソルシェ:「チェレネ、この方達に話せる事はありますか?」

チェレネ:「・・・残念ながら。」

エーレ:「(深いため息)やっぱそう簡単にはいかないよなぁ。
     完全に手詰まりって事か。」

ツェッカ:『どうしよう、エーレ。』

エーレ:「そうだなぁ。」

ルチオ:「・・・。」

チェレネ:「エーレ=テナークス。」

エーレ:「ん?」

チェレネ:「貴方は古き伝えを果たす為に訪れたのですね?」

ポラリス:「古き伝え・・・?」

エーレ:「・・・まぁな。
     他に託せる人間が居るわけでもないし
     こっちに来て事態の深刻さも大体把握できた。
     状況も状況だし、俺は前向きに考えてるよ。」

チェレネ:「抗うことも出来た筈です、
      それでも踏み入れると言うのですか。」

エーレ:「それが、俺の往くべき道ならば
    “流れ往くままに”ってな。」

チェレネ:「・・・どのような運命(さだめ)も
      受け入れる覚悟はありますね?」

ツェッカ:『エーレ・・・。』

エーレ:「勿論、そのために俺は此処に居る。」

チェレネ:「分かりました、では・・・。」
      
ヴァイゼ:「ま、待って下さい。」

ソルシェ:「どうしました?」

ヴァイゼ:「陛下、話の腰を折ってしまい
      申し訳御座いません。
      ですが、私にはチェレネ殿の話が
      今一理解が出来ません、この者達の正体は一体・・・?」

ツェッカ:『ぁ・・・。』(何かに気付く)

ソルシェ:「チェレネ、その説明はして貰えるのですか?」

チェレネ:「いいえ、今は語るべき内容では御座いません。」

ソルシェ:「“運命の鎖”ですか。」

チェレネ:「はい。」

ソルシェ:「・・・分かりました。
      時が来れば分かることです。
      ヴァイゼ、不安なのは分かりますが
      今はその追求心を沈めて下さい。」

ヴァイゼ:「はっ、畏まりました。」

ルチオ:「女王陛下。」

ソルシェ:「何でしょう?」

ルチオ:「私からの提案なのですが、
     先程の件に関して彼等が適材適所ではないかと。」

ソルシェ:「彼等に?」

ルチオ:「今現在、帝国に近付く事すら不可能なのですから。
     貴方達も手持ち無沙汰でしょう。」

エーレ:「暇人見たいに言うなよ。」

ルチオ:「違いましたか?」

エーレ:「っ、言い返せないのがなんとも煮え切らない。」

ツェッカ:『仕方ないわよ(小さい溜息)
      私達目的を失っちゃったんだもの。』

ヴァイゼ:「何処の馬の骨とも分からない奴に、
      そんな重大任務を任せられる筈がっ・・・!」

ソルシェ:「ヴァイゼ。」

ヴァイゼ:「も、申し訳在りません。」

ソルシェ:「ルチオ、何か考えがあっての事ですか?」

ルチオ:「はい、三つの条件が揃っている彼等に捜索して頂く事で
     今後の動向に大きな影響が出る可能性を考慮しています。」

ポラリス:「つまりは、探す手間を省けるかどうかって事ですよね。」

ルチオ:「えぇ。」

ツェッカ:『確かに眼鏡のお兄さんが言うとおり
      私だったら、相手が意図的に姿を隠さない限りは、
      見つけやすいかもしれないわ。』

ソルシェ:「チェレネ、どう思いますか。」

チェレネ:「意志に遠く無き導かもしれません。」

ソルシェ:「・・・わかりました。
      “紡ぎし唄”の捜索は彼等に任せましょう。」

ルチオ:「では、まず縁(ゆかり)の場所についてですが・・・」

ヴァイゼ:「待て、それなら私も同行させろ。」

ルチオ:「彼等の事がまだ信用出来ませんか。」

ヴァイゼ:「そういうわけでは・・・。」

ルチオ:「・・・お聞きしますが 
     貴女が此処を離れたとして、
     女王陛下は誰がお守りするんですか?」

ヴァイゼ:「っ・・・!」

エーレ:「ちょ、ちょっと待て!
     勝手に話進めてるけど俺に選択権は無いわけ?」

ルチオ:「おや、あるとでも思っていたんですか。
     これは、チェレネが貴方に託した
    “往くべき道”かもしれませんよ?」

エーレ:「・・・何か、
     上手く丸め込まれてるような。」

ルチオ:「気のせいですよ。」(微笑)

ツェッカ:『エーレ。“運命の流れ往くままに”でしょ。』

ポラリス:「それ、さっきも言ってましたが合言葉か何かですか?」

ツェッカ:『ふふ、秘密よ。』

エーレ:「はぁ・・・しょうがないか。
     ただ、こっちも命を掛ける仕事だ。
     どうせだったら、それなりの報酬は希望したいな。」

ヴァイゼ:「この期に及んで!」

ソルシェ:「構いません。」

ヴァイゼ:「陛下・・・。」

ソルシェ:「エーレ殿、何をご所望なのですか?」

エーレ:「そうだな・・・。」

ルチオ:「(食い気味)これならどうでしょう? 
     彼がこの任務を成功した暁には
     私も彼の目的に全面協力するというのは。」

ツェッカ:『ぇ!?』

ポラリス:「せ、先生、本気ですか!?」

ルチオ:「勿論です。」

チェレネ:「話は纏まったようですね。」

エーレ:「・・・俺の話は聞く気無しか。」

ツェッカ:『ご愁傷様。』

ルチオ:「そうと決まれば早速行動です。
     陛下、彼をお借りしても?」

ソルシェ:「えぇ、構いませんよ。」

ルチオ:「ありがとうございます、それでは。」

エーレ:「え、もう行くのか? 気が早いな。」

ソルシェ:「エーレ殿。」

エーレ:「・・・?」

ソルシェ:「・・・どうかお願いします。」

エーレ:「・・・分かりました。
     陛下の笑顔のために一肌脱いできますよ。」

ツェッカ:『も、申し訳ありません。』

ソルシェ:「いいえ、愉快な方ですね。」(微笑)

エーレ:「お褒めに預かり光栄です。」(お辞儀をしてみせる)

ルチオ:「陛下、失礼致します。
     ポラリス、魔方陣の準備を。」

ポラリス:「は、はい!」

ツェッカ:『女神の加護を。』(お辞儀をする)





≪空中都市ソミュアへの道≫





ポラリス:「これからこの魔方陣を使って
      ソミュアまで一瞬で転移します。」

ツェッカ:『不思議な方陣。
      今の魔法って凄く進んでいるのね。』

ポラリス:「人々の日常生活をより良い形に発展させる事、
      それが僕たちの仕事なんです。」

ツェッカ:『お仕事?』

ポラリス:「はい。これから向かう空中都市ソミュアは
      魔学研究機関ヴァールハイトハルクがある
      王国一の最先端都市なんですよ。」

ツェッカ:『マガク・・・研究、キカン?』

ポラリス:「僕と先生はそこの研究者なんです。」

ツェッカ:『そう、なの。』(余り分かっていない)

エーレ:「そーだ。ルチオ、だっけ?」

ポラリス:「ちょ、ちょっと貴方! 
      先生を呼び捨てとはどういう。」

ルチオ:「(遮る)ポラリス、構わないです。」

ポラリス:「は、はい。」

エーレ:「それは助かる。」

ルチオ:「エーレさん、早速ですが話をまとめましょうか。」

エーレ:「あぁ、それで・・・
     アヴァルクに縁(ゆかり)のある場所ってのは?」

ルチオ:「隠れ里トランティアです。」

ツェッカ:『もしかしてアヴァルクの故郷?』

ルチオ:「ご存知なんですか。」

ツェッカ:『すっごく昔の事だから薄っすらとしか覚えてないんだけど
      ピンク色の花が沢山咲いてて綺麗な場所だったのは覚えてるわ!』

ポラリス:「確か、共和国ランガルトの南西に位置する
      桜華の回廊という場所にあると言われています。」

エーレ:「言われてる、って事は確証はないのか。」

ポラリス:「はい。
      あの土地に広がる森全体が変わっていて、
      里の人間以外が近付こうとすると
      半永久に彷徨い続け、抜け出せなくなるんですよ。」

ツェッカ:『迷いの森かしら?』

ポラリス:「そうですね。」

エーレ:「隠れ里の所以、か。 勿論、何か策はあるんだろ?」

ルチオ:「えぇ。 我々の良く知る人物で里の出身者がいますので
     コンタクトを取ってみようかと思います。」

エーレ:「でも、なんで共和国の一部に
     王国シルヴェスタの縁(ゆかり)の地があるんだ。」

ルチオ:「・・・初代国王に嫁いだ女性が里の者だった。
     それだけの事ですよ。」

エーレ:「へぇ・・・。」

ツェッカ:『ロマンチックよね〜!』

ポラリス:「そうだったんですか〜。」

ルチオ:「ポラリス。」

ポラリス:「は、はい!」

ルチオ:「研究熱心なのはとても素晴らしいことですが、
     少し国の歴史についても勉強した方がいいですね?」

ポラリス:「す、すいません。」

ツェッカ:『ふふっ(微笑)』

ルチオ:「エーレさん、先ずは共和国ランガルトの中心部となる
     首都フラーテルに向かってください。」

エーレ:「ん、次はランガルトか。」

ツェッカ:『どんな所だろ。』

ポラリス:「異文化が集結した面白い所ですよ。」

ツェッカ:『わぁ、楽しみ!』

エーレ:「そこに里の人間がいるんだな?」

ルチオ:「えぇ。」

エーレ:「分かった。」

ルチオ:「この案件に関しては、一筋縄ではいかないと言う事を重々承知して下さい。」

エーレ:「あぁ。」

ルチオ:「存外、本当に命を張ってもらう事になるかもしれません。」

エーレ:「ちょ、・・・嘘だろ?」

ルチオ:「冗談ですよ。」

エーレ:「ブラックジョークキツイぜ。」

ルチオ:「貴方も弄りがいがありそうですね。」(微笑)

エーレ:「よせよ。」(冗談交じりの苦笑)

ツェッカ:『ねぇ、本当に私達で大丈夫なの?』

ルチオ:「“あなた達”だからこそ、お願いしてるんです。」

ツェッカ:『・・・。』(不安そうな表情)

ルチオ:「念の為こちらから書状は送っておきます、
     私の名前を出せばすぐに対応して貰えるでしょう。」

エーレ:「わかった。
     っで、俺たちは誰に会えば良いんだ?」

ルチオ:「ギルド、北(シャマール)の氷山の熊(イスベルグ アルクトス)の
     ヌーヴェン=モンタスという人物です。」





チェレネ(N):『明かされて行く存在、
        そして新たに現れる存在・・・
        光と闇が動き出した今、貴方は何を思う、女神ヴァレスティアよ。』






ソルシェ:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
      第12話 疾風に勁草を知る」



ヴァイゼ:「・・・陛下、どうなされましたか?」

ソルシェ:「少し、娘の事を考えていました。」

ヴァイゼ:「姫様の事です、必ずや無事にいられる事でしょう。」

ソルシェ:「そうですね。 互いに元気な姿で再開出来ることが何よりも楽しみです。」

















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